あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  健気な少年と鈍感な少女A


健気な少年と鈍感な少女


A


「んーー」
「どうしたのよ、カガリ。さっきから唸って?」
「あっ、なぁフレイ」
「何よ」


休み時間、カガリは頬に手をつけて悩んでいた。


「最近、アスランが冷たい気がする」
「アスラン君が冷たい?」
「うん」


カガリはコクリと頷いた。


「・・・ねぇ、カガリ?」
「?」
「じゃあ、冷たくなる前にカガリがアスラン君と話したとか、何かしたとかない?」
「・・・・・・いつも通りだったと思うぞ?」


カガリは考える仕種をして、フレイにそう言った。


「いつも通りって・・」
「いつも通り、ミーアとかメイリンとか振るのがもっとないないって言って・・」
「はぁ・・」
「フレイ?」
「あんた、それ。
私前もそれ止めなかった?」
「・・・・そうだったけ?」
「そうよ。
本当に、もう!」


いくらなんでも、アスラン君がかわいそうすぎるとフレイは思った。
あんなに健気にカガリのことを思ってくれているのに、
当のカガリは気づきもしない。
・・・・脈がないわけじゃないとは思うんだけどな・・。
現に今だってアスラン君に冷たくされて悩んでるんだし。

近すぎるのかしら。



「ねぇ、カガリ?」

「何だ?」
「付き合うってどういうことか、分かる?」
「・・・・・付き合う?」


カガリは不思議そうにそう言って。
静かに首を横に振った。


「ほら、じゃあ。
教えて上げるから思い浮かべるのよ?
そうね、アスラン君に彼女が出来るとする」


カガリは大人しく頷いて、フレイの言うとおりのことを想像した。


「すると、今はカガリと毎朝それと放課後一緒に登校しているのがまず、なくなるわ」
「へ?」
「へって、何よその反応。
当たり前でしょう?
どこの世界に彼女より幼馴染を優先する男がいるの」


アスラン君ならありえるかも知れないとフレイは思ったが黙っておくことにした。
だって、例え委員会でカガリが遅くなってもずっと待ってる男だもの。
彼女が出来たって幼馴染を優先するかも知れない・・。


「そうだよな・・。
うん。今日もひとりだったし、大丈夫だ。
・・・・たぶん」
「それで、そうね、勉強を教えてもらえないわ」


アスランはよくテスト前に数学などの苦手な科目をカガリに教えていた。
フレイはそう言って、うんうんと頷く。


「えっ、嘘だ!?」
「・・何で嘘なのよ」
「・・・・・アスランに教えてもらえないと困る」
「・・まぁ、いいから聞きなさい。
他にも休日にカガリ一緒に買い物とか行ってたりするでしょう?」
「うん」


カガリは頷いた。


「後、あんた達家も行き来してるんでしょう?」
「うん」
「それがなくなるわ」
「え・・・」


カガリは想像してしょぼんとして、まるで飼い主に放って置かれた犬のようだ。
あら、結構ダメージ大?
アスラン君やったわね!
フレイは心の中でガッツポーズをした。


「だっ、・・・けど!?」
「けど?」


焦るカガリにフレイが小首を傾げる。


「だって、アスランが家に来たりするのはお互いの両親が遅くなるからで。
例え、アスランに彼女が出来たって・・「馬鹿ね」
「え?」
「確かに、アスラン君は優しいし、カガリの言うように最初は今までと変わらないかも知れないわ」
「・・・・」
「けど、そんなの最初の内。
彼女がそんなの許すわけないわよ。
アスラン君に彼女が出来たら、カガリあんた今までと同じようにいられないのよ?」


フレイは言い聞かせるように言った。


「他にも彼女を抱きしめたり、キスだってしたりするかも知れないわ・・」
「・・・・・・ヤダ・・」


カガリはポツリと呟いた。


「え?」
「そんなの、ヤダ!!」
「・・・・・だったらいい手があるわ、カガリ」


フレイはニコリと笑った。


・・*・・


いつもは無理やりカガリと一緒にいる昼休みに俺は屋上へと続く階段で一人お弁当をつついていた。


「はぁ〜」
「どうしたの、アスラン?」
「キラか・・」


キラは何その態度?と笑った。
キラの手には売店の袋があった。


「また、カガリちゃん関連?」
「うっ・・」
「あれ、図星?」
「そうだ。悪かったな」


アスランは開き直った。


「別に悪くないけど、アスランが悩んでるときは大体カガリちゃん関連だからね」
「五月蝿い・・」


アスランはそう言うが言葉には覇気がなかった。


「で、今度は何を言われたの?」
「・・・・・『私がお前に惚れるわけないだろう』って」


アスランは言って、更に落ち込んできた。
自分で言葉にするとこれ以上きつい言葉はない。
アスランは手に持っていたお茶が入ったパックを飲んだ。


「うわっ、それ最強・・・てか、最凶・・?」
「はぁ〜」
「・・ねぇ、アスラン」
「ん?」


アスランはお茶が入ったパックから口を離すといつのまにか隣に座っているキラを見た。


「気になってるんだけど、アスランってカガリちゃんに告白したの?」
「・・・・・・したよ、したさ」
「えっ、嘘!?」
「ホント、高校入ってすぐくらい。
最初は・・、好きだって言った」
「返事は?」
「『冗談だろう〜』って笑って返された」 


興味津々といったキラにアスランは努めて冷静に答えた。


「・・それは・・」


そんなこと好きな人に言われたら僕めちゃくちゃへこむ。
当時のアスランはどういう気持ちだったんだろう。


「で、暫くしてだったかな。
付き合ってくれって言った」
「へぇ〜」


今度はあまり期待しないでおこうとキラは思った。


「『どこに付き合えばいいんだ』だってさ・・・」
「・・・・・・・・」
「普通言うか!?
数日前に告白した男に対して!!
天然なのか、あいつは!?

というかここまで来たらもうあの鈍感さは犯罪だよな!?」
「・・・・・ご愁傷様、アスラン」
「はぁ〜」


アスランは本日何回目とも知れぬため息を吐いた。


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