あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  藤の花 01





カガリは時計が12時を指すのをいまかいまかと待ち望んでいた。
時計の針が12時を指し、講義終了の鐘が鳴った途端席を立った。
あらかじめ書いておいた出席表を教授の前に置いて誰よりも早く教室を出た。
いた。
昼前で混雑している食堂に目当ての人を見つけてカガリは駆け寄った。

「・・・はぁ〜」
「・・・どうしたんだ?アスラン?」
「あ、カガリ!」
「おはよう、アスラン」

慌ててきたことを微塵も見せないでカガリはにっこりと微笑んだ。
アスランの隣に腰を下ろしぱたぱたと乱れた服を調える。

「おはよう、カガリ」

彼、アスラン・ザラは同じサークルで知り合った男性だ。
整った容姿に流れるように美しい髪、鮮麗された物腰、麗しい声、
そして性格やズバ抜けていい成績でこの大学一もてる男性だろう。

「今日も早いな」
「はは・・、まぁな」

そりゃ、講義が終わってあんなに猛ダッシュで食堂に駆け込むんだから、
早くて当たり前だろう。

「前の講義何だったんだ?」
「アーサー教授の心理学」
「ああ、なるほど」

アスランは苦笑いした、アーサー教授の講義は優しくて教え方の丁寧な先生だ。
しかしいかんせん生徒に甘くよく生徒に舐められているのか講義終了5分前には生徒の抗議に負けて生徒を解放している。
まぁ、今回に限ってはぎりぎりに終わってしまったから猛ダッシュしてしまったんだけど・・。

「講義も1館?」
「うん、そうなんだ」
「それより、あんなに大きなため息吐いてどうしたんだ?」
「えっ、ああ・・・〜、聞かれてたのか・・//」

アスランは少し顔を赤らめて首の後ろを掻いた。
どうやら照れたときの彼の癖のようだ。

「いや、別に対したことじゃないんだけど・・。
・・ミーアのことなんだけど・・」
「あっ・・、うん、そっか」
「アスラーン♪」
「あっ、噂をすればミーアだぞ♪」

聞きなれた声に明るい表情になるアスラン。
そしてぞくぞくとシンやレイ、ルナマリア、メイリンもやってくる。
彼らは同じサークルのメンバーだ。

「今日もアスランとカガリ、早いのね」
「はは、俺は前の講義が空いてるからな」
「私も前の講義アーサー教授だったから」
「へー、そうなんだ。
そういえばアスラン・・」

ミーアはかわいらしく首をかしげてアスランに話しかける、
そしてアスランも優しくミーアを見詰め合って・・。

「じゃあ、私お昼買ってくるな。
私もう、お腹ぺこぺこ」

鞄から財布を出して笑うと、同じように鞄から財布を出してメイリンが同意する。

「あっ、私もです」
「先に来たならあらかじめ買っておくべきかと・・」
「なっ、せっかく席とっておいてやったのに、
レイ酷いぞ!」

皆でわいわいと話し合う。
こういう皆と過ごす時間は凄く好き。

けれど、そんな風に楽しい会話の輪に入ってこないアスランとミーア。
ふたりは微笑みあって話し合っている。
当たり前だ・・ふたりは恋人なんだから。
アスランはもてる。
たぶんこの学校で一番。
そんなアスランに私も恋をした。

この学校で一番もてるアスランを誰が仕留めるのだろか、
彼が入学した当初の話題はそれでいっぱいだった。
そして、・・・。
学校一もてるアスランを仕留めたのはミーア・キャンベルだった。

ずきずきと痛む胸を押さえてカガリはお昼を買いに席を立つ。
無駄だってわかってるのに、
お昼一番早くに来て同じように食堂に早く来ているアスランとふたりで過ごせる時間が嬉しくて毎日猛ダッシュして食堂に来ている。
そしてミーアが来て恋人にしか見せないアスランの顔を見せ付けられて・・そのたびに胸が悲鳴をあげている。
もう、いい加減諦めればいいのに。
なんでだろう、一瞬でアスランに恋をしてしまった癖に諦めるのにはきっと長い長い時間を要する。
もう、ほんとなんて自分は馬鹿なんだろう・・・。
カガリは「はぁー」と長いため息をした。

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