あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  caffe 07


「いらっしゃいませ」

高く響く鐘の音の後、開いた扉から店に入って来たお客様にカガリは微笑んだ。

「こんにちは。
今日はカウンターに座っても?」
「どうぞ、どうぞ」

店員と客と言うには些かぎこちない動きでカガリはお客様――アスランをカウンターに案内した。
でも、それもその筈。
先日のデートからカガリがアスランと顔を合わせるのは初めてのことになる。

「アスラン、注文は」
「そうだな。
今日はカガリのオススメがいいかな」
「えっ?
ブラックじゃなくて?」
「うん」
「だったら、カフェラテかな。
カプチーノもおいしいぞ」
「はは、イメージ通り」
「何だよそれ、どういう意味?」

むっとするカガリにアスランは笑みを零した。

「そのまま、カガリっぽいなってことだよ。
じゃあ、カフェラテひとつお願いします」
「はい」

カガリはカウンターの厨房側に回って、
オーダーを受けたカフェラテを作る作業に取り掛かる。
最近ではカガリも営業が終わってから日夜練習に励んでいて、
お店のドリンクやパフェ系統のメニューはだいぶ上手く作れる様になってきた。
先輩のラクスや勿論オーナーには敵わないけれど。
そういえば、アスランに私が作った珈琲を飲んで貰うのは初めてだ。
そう思ったら何だか緊張する。
私の腕にカフェラテの命運がかかってる!
ふーと深呼吸をしてから、カガリは練習でやってる通りを心がけながらエスプレッソを作った。

「おまたせしました」

カウンター越しにコーヒーカップを置いて、伝票をアスランの手元に置いた。

「ありがとう」
「うん」

ドキドキしながらカガリはアスランの動作を目にやった。
カウンター席はどちらかと言えば、ひとりでゆっくりしたい人や店員と話をしたい常連客が座る場合が多い。
さすがにずっとまでは行かないまでも、アスランと話を続けることは可能だし、
それにアスランと会うのは実は久し振りのこと。
アスランの学校はつい先日までテスト期間中。
学校は午前中だけだったので、喫茶店に寄らなかったらしい。
そう言う私もつい3日前にテスト週間が終わってバイトを再開したところなのだけれど。
今までだったらたぶんそうだろう…という憶測でしか考えられなかったけれど、
アドレスを交換し、仲良くなった今はわざわざそんなメールをアスランが送ってくれた。
それが凄く嬉しかった。

「頂きます」

アスランがカップに口を付けてカフェラテを飲んだ。

「おいしい」
「よかった」
「うん。
ここではブラックばかりだったから、
カフェラテ飲むのが新鮮」
「アスラン、ブラックばっかりだもんな。
あんまりブラックばかり飲んでたら胃にあんまり良くないぞ」
「…それ友人にも言われたな。
確かに、家でも夜中にブラックばっか飲んでるからな」
「夜中に?寝られるのか?」
「勉強してるときにね。
カフェインで眠れなくなったことはないかな」
「へー、私は駄目だな。
目が冴えちゃって眠れない」
「カガリは家で淹れるの?」

アスランは手にしたカップを持ち上げてカガリに尋ねた。

「家ではあんまり淹れないな。
ここではオーナーに教えて貰いながら練習中。
…最近、ラテアート上手く出来る様になったんだ」
「そうなんだ。
じゃあ、今度頼むときはカガリにカプチーノお願いしようかな」
「分かった。
それまでもっと腕を上げとくな」

そう言ってアスランに飲んで貰う時のラテアートを考えて、
思わずハートを思い描いてしまったカガリは顔を赤くした。

「ふふっ…独占欲の強い彼氏さんですわね」

他愛のない話だけをしてアスランは暫くして店を出た。
レジを終えたカガリの隣にそっと近寄ったラクスはそっとカガリに耳打ちをした。

「ちっ、違うぞ、ラクス。
アスランとはまだそんなんじゃなくて、
私の一方的な片思いって言うか」
「なるほど。
では、お付き合いされてからは大変そうですわね。
店内であんな風にラブラブな会話をされてしまっては、
カガリさん狙いの男性は諦めるしかなさそうですから」
「えっ?私狙いって…そんなのいる筈ないだろう?
ラクスみたいにかわいい子だったらまだしも」
「あらあら」
「私、仕事戻るから!
ホール任せたままでごめんな」
「いいえ。
まかせてくださいですわ」

にっこり微笑むラクスにカガリは「ありがとう」とお礼を告げた。



・・*・・
まだって言っちゃうカガリが可愛いと思います。
まだなんだっていう。
いつかアスランと付き合いたいもんね。
かわいいな、もう!ってなります。

あとこの話、実はタイトルちょこちょこ弄ってたんですけど、
結局カフェラテのカフェ=caffeにすることにしました。
英語弱くてすいません。



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