あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  caffe 06


「ああ〜〜、今回のテスト範囲広すぎ!!
何なのこのテスト範囲50P〜126Pって!!」

そうやって文句を言う少年が広げた数学の教科書には、
数字の羅列が刻まれていた。

「そうでもないだろう?
今回図形とかグラフが多いし」
「まぁー、そうかもだけどさ」
「そうだぜ、キラとアスランは数学得意だろうが」
「んーー、得意なんだけどさ」
「……貴様、自分で言うな」
「えー、なんでさ、イザークだって数学得意じゃん」
「イザークはそっちより日本史とか好きだよな。
戦国武将とかほぼ暗記だもんな」
「あんなものエピソードと一緒に覚えれば造作もないだろう」
「イザークのは結構ヲタ入ってるよね〜〜」
「言えてる」

一仕切り笑った後、少年達は蓋をされたカップからストローでドリンクを飲んだ。

「そういえばさ、アスランの兄さん。
結婚したんだよね?」
「うん、してるけど?」
「あの人のことはいいの?」
「・・・・・・・・・・いいも何も、俺が決めることじゃないだろう」
「えっ、何、何?
アスランの色恋沙汰?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ディアッカ、煩い」

教科書で頭を叩かれて、金髪の少年は頭を抑えた。

「自業自得だ」

銀髪の少年は優雅にアイスティーを飲んだ(ストローで)。

「まぁ、しょうがないよねー。
次だよ、次!!
新しい恋!!何だったら、合コンとかしちゃう?
人数集めるよ?僕結構顔広いし!!」

ワクワクと浮かんだ表情で茶髪の少年が藍色の少年に言う。

「断っておく。
それに恋する相手ならもう既にいるし」
「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!!??」
「キラ、煩い」
「はっ!!??えっ!!??アスランってそんなに変わり身早かったっけ?」
「何だよ人聞きの悪い。
お前だって今新しい恋をしろって言ったところじゃないか」
「いやー、言ったけど。
へーーー、へーーー」
「気味が悪いから、その顔やめろ」

金髪と銀髪の少年は無視を決め込んだようで、
金髪の少年は外を、銀髪の少年は教科書とノートを眺めた。

「おい、ディアッカ。
貴様国語は得意だろう?
居るの謙譲語は何だ」
「あっ、ナンパされてる」
「質問に答えろーー!!」
「いやー、あの子かわいいなって見てたら、男2人に声掛けられてるし。
てかあそこドミニオン高校の制服だよな。柄悪いって噂の。
うわー助けにいっちゃおうかな。
それで助けてもらってありがとうございますって言われてアドレス貰っちゃったりして。
うわー、やべーー!!超燃える展開!!
俺、女の子助けて来るわ!!
って、あれ?アスランは?」
「さぁ?」
「・・・・・・・・・燃える展開を期待して助けに行ったみたいだぞ?」
「は?」

ファーストフード店のガラス窓から、藍色の少年が女の子を庇ったのが目に入った。

・・*・・

「彼女っ、今暇?」

放課後、今日はバイトもない日で友達と電車を乗り継いで買い物に来た帰り道だった。
友達の家はザフト方面なので途中で別れてひとりで歩いているところだった。

「え・・?」

声を掛けられて思わず周りを見るが、それらしい女の子はいなかった。

「やった、超当り」
「かわいいね」
「その制服オーブ女学院の?超お嬢様学校じゃん?」

それでやっと自分のこと言われていることに気づいた。
自分と年の変わらない男の子が3人。
私に声を掛けて来たのだ。

「へぇーこの子お嬢様なのか。
ねぇ、俺たちと一緒に遊ばない?」
「えっ、えっと」

カガリはぶんぶんと首を横に振った。

「まぁ、まぁ。
そう言わないで。
楽しませてあげるから、さ」
「そうそう、お嬢様学校では教わらない愉しいことをね」

腕を掴まれて強引に引っ張られた。

「・・っ」

怖くて思わず目を瞑った。
けれど閉じる寸前目の前を肌色が覆った。
さらに後ろから手が伸びて来て体勢が崩される。
驚きが声に出る間もなく後ろから抱き留められた。
そして頬に温かな感触。
チュッ
音を立ててそれは離れて行く。
目の覆いも外されて、離れて行くそれを目で追った。

「悪いけど、俺の彼女なんで、他当たってくれる?」
「(アスラン・・!?)」

目を覆っていた掌は口に触れ、カガリの声は音にはならなかった。
声を掛けてきた男の子は興を削がれた様に離れて行った。

「何やってるの?」

カガリを包み込んでいた掌が離れて、アスランはカガリをじっと見た。
声はどこか怒気を含んでいた。

「何って、買い物を・・・」

きょとんとしてカガリはアスランを見る。

「買い物ね〜、・・・はぁー」
「アスラン?」
「カガリが天然なのは知ってるけどさ。
今の俺より性質が悪いナンパだから気をつけなよ」
「えっ、あっ・・・うん///」

そう言われて、今自分に起こったことがナンパだったことに気付き。
アスランが助けてくれなかったらと思うと怖かった。
そして同時に自分がアスランにされたという’ナンパ’を思い出して
カガリはこっそりと頬を染めた。
ずっと喫茶店でコーヒーを飲むアスランを見ていたのだ。
それにナンパも何も初めに声を掛けたのは私からだ。
だからその後のことは夢の様で今だってバイトでもないのにこうして話していることが奇跡だ。

「とりあえず、カガリ。
こっち来て」

アスランは手をカガリの手に絡めて、
歩き出した。
慌ててカガリも倣う様に歩き出す。

「あの、アスラン?」
「ん?」
「助けてくれてありがとう」
「・・・・どういたしまして」
「・・うん」

・・*・・

「アスランお帰りーー」
「・・・」

アスランに連れられて入って来たのは近くのファーストフード店だ。
アスランの友達だろうか、ザフトの制服を着た男の子が3人いた。
その内の茶髪の少年の呼びかけに応えることなくアスランは空いている席の近くまでいき、
椅子に掛けられているスクールバックに徐に机の上に並べられたノートや教科書を仕舞い込んでいく。

「ねぇ、ねぇ、アスラン。
その子誰?今ナンパして来たの?」

そう言われて自分のことを指していることに気付いた。

「アスラン、ずりぃーぞ!!
俺が先に助けに行こうとしたのに」

ファーストフード店の窓からはさっき自分がいた場所が目に入った。
そうか。
アスランはここで友達と勉強をしていて私が困っていたから助けに来てくれたんだ。

「あのっ、私。
カガリって言います!!
えっと、アスランとは「そう。さっき俺がナンパしてきたの。
という訳で帰るから」
「えっ、ちょっと、アスラン!?」

スクールバックを肩に背負ったアスランがカガリの腕を引っ張る。

「へぇーーーー」
「ふぅーーーん」
「ほぉうーーー」

面白そうに彼らは頷いた。
結局アスランの友達だと思われる彼らと禄な挨拶も出来ずに
ズルズルとアスランに引きずられて店内を後にした。

「カガリちゃん、またな!」

扉から出るとき金色の髪の少年が楽しそうに手を振った。

「アスラン、いいのか?」

このままではアスランがナンパしたのだと勘違いされてしまうのではないだろうか。
アスランは知り合いの私が困っていたから助けてくれただけなのに。

「いいよ別に」
「けど・・・」
「いいから。
それよりあいつらにカガリとの関係を知られる方が嫌だ」

え・・・?
アスランは私を友達に紹介したくないのだろうか。
そりゃまぁ・・・ただの知り合いだけど。
私この前告白したんだぞ!?
なんだか悲しくなる。

「なんか恥ずかしいだろう?
喫茶店の常連客とウエイトレスさんとか・・////」
「え・・・////」

アスランの予想外の反応に思わずカガリも頬を染める。

「カガリは本当に帰る?」
「え・・?私今帰るとこだったんだけど・・」
「ふーーん、そう。
なら帰ろう。今すぐ帰ろう」
「えっ、えっ・・・・、やだ。
あの。帰る前にどこか寄り道しないか・・?」
「くすくす。
うん。どっか寄り道しよう。
意地悪ばっかしてごめんな」

ポンポンとアスランの掌が頭に乗せられる。
優しくて大きな手。
恥ずかしくて嬉しくて。
それに、『俺の彼女』って、あの人たちを追い払うだけの手段だと分かっていても、
アスランの口から出たその言葉は嬉しい。
期待していいのだろうか・・。
・・・・・・・・・・・・・いつか、本当にアスランのそう呼ばれる存在になることは出来るのだろうか。
赤くなった頬をカガリは手で覆い隠した。


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