あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  caffe 04


「ありがとう、ごちそうさま」

アスランがにっこりと微笑む。

「はい!ありがとうございました」

カガリはそれに丁寧にお辞儀で返す。
カランと扉がしまるとそれに伴って鐘の音が鳴る。
あれから、雨の日にアスランに傘を貸してからこうして少しずつアスランと会話することが増えるようになったように思う。
以前よりも会話も多いし、にっこりと微笑んでくれることも多くなった。
・・・好きな人がいるのはやっぱりショックで胸がずきずきと痛むけれど・・。

「(うん。大丈夫。
最初からブレーキを締めていたら深みに嵌ることもない)」

今のように会話や笑顔が嬉しい。
そんな些細なことで喜んでる位が私にはちょうどいい。

「これ以上・・。好きになっちゃいけない・・」

ぐっ・・。
カガリは拳を強く握った。

「それは今の方に対してですか・・?」
「・・はい。
だって・・好きな人がいる人を好きになったって・・ってえ!?」
「ふふっ。
今から私と交替ですわよ」
「あっ、はい!」

ふわふわの綿菓子のようなラクスはにっこりと微笑んだ。
そういえばとカガリは時計を見るといつのまにか今日のシフトの終わる時間だ。
「失礼します」とラクスに一声かけて、上がろうとする。

「先ほどの話ですが、別にいいんじゃないでしょうか?」
「え・・?」
「好きな人がいる方を好きになってはいけないなんてことはありませんわ。
恋愛でわがままが許されるのは若い女の子の特権ですもの。
それにせっかくカガリさんはかわいらしいのですから
自分の心に素直になさったらよろしいと思いますわ」

ラクスはふっと微笑んだ。

「・・・ラクス・・?」
「今出られたばかりですから急いだら追いつくのではないですか?」
「・・・うん」

パタパタと駆け足でカガリは消えていく。

「・・いいのか、嬢ちゃんにあんなこと言っちゃって」
「オーナー・・、聞いていらしたんですか?
趣味悪いですわよ」
「・・へいへい・・」
「私はいいと思いますわ。
だってあんな一途に彼を見ているカガリさんを見ていたら
応援せずにはいられませんもの。
カガリさんには少し言いすぎのエールの方が調度いい気がします」
「・・はぁー、ラクス嬢は怖いねぇ・・。
1番テーブルにコーヒー持っていってくれるかい?」
「はい」

ラクスはそして微笑むのだった。

・・*・・

いた!
ラクスに言われて本当に大急ぎで支度を終えた私は店を出た。
以前一緒に歩いた道を辿るとそこには藍色の髪の男の人の背丈が見えて
カガリは駆け寄った。

「アスランさん!」
「・・えっ・・あっ・・カガリ?」

アスランは少し驚いたようで目をぱちくりさせた。

「こんにちは」
「・・こんにちは。
さっき会ったばかりだけどね。
バイト終わったの?」
「あっ、はい。
・・それで・・アスランさんの後ろ姿が見えて・・」
「走ってきたんだ」

くすくすとアスランは笑う。

「駅まで一緒に行こうか」
「え?」
「・・え?ってそのために追いかけてきたんじゃないの?」
「あっ・・うー、はい。そうです!」
「・・・カガリって何駅でいつも降りるの?」
「オノゴロ駅」
「じゃあ、方向は一緒かな」
「アスランさんは何駅なんですか?」
「オーブ」
「本当ですか!!」
「?」
「私学校そこなんです!!」
「あっ、もしかしてオーブ女学院?」

コクコクとカガリは頷く。

「へぇー、そういえば歳いくつ?」
「17です」
「あっ、なんだ同い年だ」
「へ」
「というわけでいい加減"さん"なんてつけなくていいよ。
なんかくすぐったくて」
「えっと、じゃあ・・アスラン・・?」
「うん」

そうして会話しながら歩いていたら駅なんてあっという間で、
改札を通り抜けて駅のホームで電車を待つ。

「俺。ザフトなんだよ」
「あっ、うん。制服でなんとなくそうなのかなって」
「そういえばカガリの制服姿ってみたことないかも。
今も私服だし。オーブって私服制?」
「ううん。ただオーブ、バイト厳禁だから」
「・・・・へぇー、カガリって結構悪だね」
「うっ」
「けど、まぁ。あの喫茶店に入ってカガリがいなかったら嫌だから。
目瞑っとこう」
「え・・?」
「何?」

何か、今凄く嬉しいこと言われたような・・。

「あっ、電車来た」

ふたりしてぎゅうぎゅう詰めの電車に乗り込む。

「カガリ、ちょっとこっち」
「えっ」
「なんかほっとくと押しつぶされそうで怖い」

腕を引っ張られて壁の方に移動させられて、その前にアスランが立つ。

「(ちっ、ち・・近いーー////)」
「カガリ大丈夫?」
「へっ、平気///」

なんかさっきまで全然平気だったのに、
こんな近くにアスランがいると胸が急にどきどきと高鳴る。
線の細い輪郭にシャープな顎。高い鼻に横長な澄み切った瞳。

「(やっぱり、私。
アスランのこと好きなんだ・・)」
「カガリ・・?」

『ちゃんと好きな人いるし』と言ったアスラン。
『好きな人がいる方を好きになってはいけないなんてことありませんわ』と言ったラクス。
別にアスランとどうなりたいなんてあるわけでもない。

「(けど、優しくされたら期待しちゃうよ・・)」

カガリは具合の悪い振りをしてそっと体をアスランの方に傾けた。
今ぐらい、少しぐらいいい思いしてもいいよね・・。

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