caffe 03
「こんにちは」
夢かと思った。
「・・こんにちは」
「よかった、今日も店にいてくれて。
はい、傘ありがとう。
助かった」
「はっはい」
信じられない。
だってずっと眺めているだけだった人が、笑顔で話しかけてくれている。
そして少年は傘を渡そうとしたが、少し迷って傘を差し出した手を引っ込めた。
「あ、今勤務中だからこういうのってやめたほうがいいのかな」
「え?」
「カガリさえよければ、待ってるけど?」
「(ええええ・・・!!!)」
「終わるの何時?」
「・・今日は8時ですけど・・」
「じゃあ、それまで待ってるね。
いつものブラックお願いします」
「あっ、はい。かしこまりました」
そしてにっこりと彼は笑った。
・・*・・
お店を出て数歩のところでカガリはアスランから傘を受け取った。
この傘のおかげでアスランと近づくことが出来た。
宝物だ。
きゅーとカガリは傘を抱きしめた。
「あっ、あの待っててもらってありがとうございます」
時間は8時を過ぎていて、申し訳なさそうにカガリは顔を伏せる。
だってアスランがこんな時間までお店に残っていたことなんてまずない。
「くすっ」
「??」
「いや、カガリって純粋そうだなと思って」
カガリは顔を上げてアスランを見上げる。
「え?」
「ナンパされてるって気づいてないんだもんなー」
「え?ナンパって、・・ナンパ!!!!????」
「うん。
ナンパ。
カガリかわいいから」
「かっ、かわいいって・・////」
「本当にうぶだなー」
アスランは朗らかに笑う。
「・・なんかアスランさんって・・」
思ってたより・・。
「・・イメージと違う?」
「え?」
「なんかそんな顔してた」
「あっ・・いや、
そういうわけじゃ・・、けど・・はい」
コクリとカガリは頷く。
「いいよ。
気にしない。
顔と性格があってないってよく言われるし」
「そうなんですか?」
「なんか勉強とかしてるときは凄く真面目に見えるのに
いざ話してみたら軽そうだとか、遊んでそうとか」
「そんなことないです!」
「・・・頷いたのに?」
「う〜」
「くすくす。けど別に遊んでないよ。
ちゃんと好きな人いるし」
「えっ・・・?」
「けど、本当に傘ありがとうね。助かった」
「あっ、はい」
「また、お店行くからそのときはよろしくね」
そしてアスランは手を振って去っていった。
「好きな人いるんだ・・・」
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