あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



   caffe 01


最近の私はどうやらおかしい。
自分で自覚しているのだからすごくおかしい。

「カガリさん・・?」
「あっ、ごめんなさい!!」
「ふふっ、最近ずっと上の空ですわね・・」
「ごっ、ごめんなさい」

とても綺麗で美しいラクスにほんのりと怒られたようで、
カガリはすまなそうに頭を下げる。
その後、すぐにお客さんが来てラクスはやはり美しく微笑むと接客に消えた。
カガリがアルバイトしているのは喫茶店だ。
コーヒー豆を挽いて入れるコーヒーはおいしいとどうやら評判のようで、
店は年配の方を中心に繁盛している。
だが、もちろん中には若いお客さんもいて、
その中でもカガリが一番若いと思うのは高校生の青年だった。

「(あっ)」

そして、今日も見慣れた姿を見つけてカガリは足を踏み出す。

「いらっしゃいませ。ご注文は」

あの人が座るのはいつも外が見える奥の座席。
どうせならカウンターに座ってくれれば、
ずっと見ていられるのにとは思うけれど
いつもノートやらプリントを広げる彼だから
カウンターには来られないのだろうと思う。

「ああ、ブラックで」
「かしこまりました」

おしぼりと水を置いて頭を下げる。
そして青年はいつものようにテーブルにノートを広げて
難しそうな数学の問題を解き始めた。

「ブラック入りました」
「ほーい」

店のオーナーがそれを受けてコーヒーを作りはじめる。
私もコーヒーは好きだしブラックでも飲める。
だけど、少なくとも、

「(高校生が、ブラックでコーヒー・・)」

かなり稀なことだと思う。
高校にある自動販売機のコーヒーは砂糖たっぷりの甘い甘いミルクコーヒーだ。
珍しい・・。
最初はそれだけの興味だった。
けれど平日ほぼ毎日来る彼を目で追っていたら、
それはもう止められないほどに溢れ出していた。
彼の名前は何だろうとか、どこらへんに住んでるんだろうかとか。
ブラック好きなのとか、数学は好き?だとか、・・彼女はいる?だとか。
どうでもいいことばかり浮かんできて、
彼のことをもっともっと知りたいと思っている自分がいる。

「(定型文以外の会話がしたいな・・)」

そうは思うが、勇気は出ず。
ただの客と店員という関係性。

「(課題しに来てるのに、店員にいきなり話しかけられても困るだろうしな)」

だいたい店員と会話をしたい場合はカウンターに座る人が多い。
だけど、彼はそれをしない。
だからより近寄りがたいんだよな。

「カガリちゃんブラック出来たよ。
持っていてあげて」
「はい」

カガリはブラックコーヒーを持って、今日も彼の元へ足を運んだ。




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