あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  ビターチョコ 08 好き(End)


「何やってんだ俺」


アスランは一人取り残された屋上で物思いに沈んでいた。
今ごろキラとのキスシーンの真っ最中だろうか。
・・・。



『覚えてるよ。忘れたことないもん』



というカガリの言葉に心臓が跳ね上がった。
俺もずっと覚えてた。忘れたことなんてない。
けれどカガリがどこにいるのか事務所を移籍してから消息が分からなかった。
だから再会して凄く嬉しかった。
・・それでも、やっていいことと悪いことがあるよな。
嫌いな人にキスされるなんて嫌に決まってる。


『相手役アスランじゃなくてキラさんでよかったです』


思い出すたびにアスランの胸は痛んだ。
カガリはキラが好きなのだろうか?
なら、俺は・・、諦めないと・・いけない。
・・・友達と幸せになることを願って。


ビターチョコ

07.好き



「アスラン、そんなとこで何してんの?」


真横から聞こえたのは今考えていたキラだった。


「・・・・・」
「さっき、カガリと何話したの?」
「・・・・・」


一向に何も話さないアスランにキラはむかついてきた。


「・・・・アスラン聞いてるの!!」
「・・・・・・・今はお前の顔見たくないんだ。
ここから出て行ってくれないか」


アスランは静かにけれど声に怒気を含ませながら言った。


「僕がカガリちゃんとキスしたから?」
「・・・・・」


アスランは返事はしなかったが。
米神にしわが寄り、眉毛がピクリと動いた。
小さな動きだが長年からの友達であるキラにはアスランの変化が分かるだろう。


「・・・・」
「はぁ・・どうしてそういう意地はるかな?
言ったらいいじゃん、演技で何百回も言ってるんだから照れるとこじゃないでしょう」


キラは知らないのだろうか?
カガリはキラが好きだと。
きっとキラのオーディションを受けたのはキラのファンだったから。
そして実際会ったキラはテレビでみるなんかよりずっと綺麗だ。
性格も女慣れしてる癖にそれを感じさせない雰囲気と素直さ。
ましてやキスをしたんだ。
惚れないはずがない。


「・・俺だけが好きなだけで、物語は出来上がらないだろう?」


片思いでは話は作れない。
俺が今まで演じてきた物語の主人公はいつも欲しいものを手に入れていた。
それを何度も羨ましいと思ってきた。
だからその役に自分を重ねて演じることが出来た。
世の中には物語の主人公になれない人が五万といる。


「・・・・何、言ってんの?
どう見たって君達、両思いじゃん」
「だから!!
カガリはキラのことが好きなんだ!!!」
「はぁ?」
「だから今、俺は身を引こうと心の整理をしているんだ。
俺の心を掻き乱すことをいうのはやめろよな!!」
「・・・・・・・・・・・・・はぁ」


キラは大きくため息をついた。


「なんだよ」
「大馬鹿」


アスランはムッとした。


「僕が好きならキスシーンの後に
『アスラン』って言いながらあんなに哀しそうに泣くわけないでしょう」
「!!」
「カガリちゃんまだスタジオにいるだろうから行ってあげたら?
・・ってもういないし」


変なところで行動派のアスランをキラは笑った。


「偶にはいいよね。友達の恋を応援するキューピットになってあげるっていうのも」


キラは優しく微笑んだ。


「カガリ」


カガリはその声に後ろを振り向いた。


「!!」


カガリの目の下は泣いたため赤く染まっていた。


「話がしたい。いいか?」


カガリはアスランの問いに首を縦に振った。
アスランはカガリの返事に安心したように笑った。
そしてアスランはカガリの手を握りスタジオの外に出た。


「大丈夫か?ビショビショだぞ?」
「雨の中での撮影だったから・・」
「風邪引くなよ」


そう言ってアスランはカガリの肩に掛かっていたタオルを持ち上げ
濡れている髪のうえでワシャワシャと動かした。
タオルから隠れた瞳でカガリはアスランを見上げた。
アスランの話がなんなのかはわからないけど、さっき決めたんだ。
ちゃんと言おうって。


「アスランあのな・・私「カガリが好きだ」
「!?」


カガリの声に重ねるようにアスランはカガリに気持ちを伝えた。


「・・・・カガリも同じことを言おうと考えていたと思ってもいい?」


カガリはコクコクと首を縦に動かした。


「よかった」


アスランはカガリを強く抱きしめた。


「さっきはごめん。
男として最低の事をした」
「ううん」
「ずっと好きだった////」
「・・・・私も・・////」


二人は見つめ合って笑った。


「なぁアスラン?クリスマス予定あるか?」
「ないよ。一緒に過ごす?」
「うん。それとこの前の女の人って・・アスランの彼女?」
「はあああああ!!!!????」


アスランの大声にカガリは目を丸くした。


「えっだって親しそうだったし」
「・・・・・もしかして、カガリ。
俺を避けてたのはそのせいだったりするのか?」
「・・・・うん」
「はぁ〜」


アスランは大きくため息をつきカガリをジロリと見た。


「なんだよ、その目!!」
「だって自分がそんなことに振り回されたと思うと」
「人が真剣に!!」
「あれは俺の母親だ」
「・・・・ははおや?」
「そうだ」




誤解が解けて嬉しそうなカガリをアスランは再び抱きしめた。


「カガリ、キスしていい?」
「・・・・うん////」


さっきよりも深いキスをアスランはカガリに送った。


・・今度はちゃんと思いがこもった本気のキス出来たよな。
カガリはアスランに微笑み返した。



その後、二夜連続ドラマは無事放映され視聴率17.5パーセントの高視聴率を記録した。
カガリはこのドラマを機に女優という道を歩くことになり、
そしてのちにアスランと二人でトップ俳優の夫婦に上り詰めるのだった。


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