あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  ビターチョコ 06 すれ違い


アスランには彼女がいた凄く大人っぽくて綺麗な人。
ずるいよな。
優しくなんてして欲しくなかった。
そう思うほうが馬鹿なのかな。


ビターチョコ
06.すれ違い


「カガリちゃん!!」




家に帰って数時間経った頃に叔父が尋ねてきた。



「ユーレンさん?」
「カガリちゃん!!どうして教えてくれなかったのだ!?」
「?」


はてなマークを浮かべるカガリにユーレンは携帯電話を開けて見せた。

その画面に現われたのは今度のドラマの紹介ページだった。


「え?」


カガリは携帯をユーレンから奪い取った。
そして携帯の画面には『オムニバス形式の小説を二夜連続ドラマ化!
ヒーロー役はキラ・ヤマトとアスラン・ザラ
そして相手役は厳選なるオーディションの結果選ばれた四人
フレイ・アルスター/カガリ・ヒビキ/ミーア・キャンベル/メイリン・ホーク』
と書かれていた。


「・・・・・・・騙された」


もしかしてもしかしなくてもこれってちょい役とかじゃなくてヒロイン?
確かに説明の時話が長かったわけだ。


「事務所はもちろんこちらに入ってくれるよな」


ユーレンはウキウキと声を弾ませて言った。



・・*・・



そして再び叔父が立ち上げた事務所に入るようにカガリに促した。
カガリとフレイはドラマの撮影の打ち合わせにきていた。
フレイは先日の酔った後、親に迎えに来てもらって無事家に帰ったようだった。


「で、入ったわけね」
「ああ」
「まぁカガリらしいけどね」



フレイのその言葉にカガリは頬を膨らませた。


「フレイもフレイだ。知ってたなら・・」


二人が受けたオーディションは俗に言う新人発掘オーディションだったのだ。


「だからそれはゴメンって。本当のこと言っちゃうとカガリ絶対来ないって思ったから」
「当たり前だろう?なんで私が芸能人なんかに」


カガリは大きくため息を吐いた。


「アルスターさんヒビキさん少しいいですか?」
「あっはい」
「はい」
「これ、台本です。撮影は一週間後だから。時間に遅れないでね」
「はい」


フレイは嬉しそうに返事をした。
そして返事を返さないカガリをみてフレイは肘でつついた。


「・・・わかりました」
「そっか。カガリちゃんは別に芸能人になりたかったわけじゃないんだ」


打ち合わせが終わりフレイが呼び出されて話を聞いている間カガリはばったりとキラとであった。



「はい」
「フレイちゃん曲者だね」
「本当ですよ。なんだってこんなことに・・」
「けど、昔はやってたんでしょう?子役」
「・・・・そうですけど・・・ってなんで知って!?」
「まぁそれは置いといて、この前、アスランとどうだった?」
「どうって別に何も・・」



カガリは言いながら自分の気持ちが沈んでいくのが分かった。
ずっとだ。



「・・そっか(せっかく御膳立てしてあげたのにアスランは何やってんだか)」
「そうですよ」



二人は乾いた笑みで笑った。


「・・そういえば台本見た?」

「?今日貰ったところですよ」
「僕達キスシーンあるよ」
「へえ、そうですかキスシーン・・・・ってええええええ!!!!!」
「カガリちゃん。声が大っきい。それにワンテンポ遅い」
「ごめんなさい」
「まぁ振りになるかもしれないけど、確実なんじゃない?
あの監督やたらとラブシーンにリアルティを求める人だから」


カガリは台本を取り出し読み始めた。


―――――――――――――――――――――――――――――――

私とフレイが出るドラマは
オムニバス形式小説の第一弾で『ピンクの夢』というタイトルだった。
ある日主人公は雄太(キラ)は記憶喪失になり記憶をなくしてしまう。
記憶をなくした雄太を支えたのはクラスメートの結城(カガリ)だった。
そして二人は付き合い始めた。
幸せだった二人を襲ったのは雄太の記憶の回復だった。
雄太は記憶がなくなる前に付き合っていた花音(フレイ)を思い出し。
自分が記憶を失った原因は花音が交通事故にあい
死んでいく様を目の前で見たからだと思い出す。
何もかも忘れ逃げていたと知った雄太は自分が恥ずかしくなり、
雄太は喪に服そうと結城との別れを決意する。
しかし結城はそれを拒む。
花音の幸せは雄太が笑っていることだよと泣きながら言われ、
雄太は強く生きていくことを決意する。
そして数年後二人の間に生まれた子を花音と名付けた。

―――――――――――――――――――――――――――――――

「・・・・私とフレイの役寧ろ逆なんじゃ。
どっちかというと結城の方が雄太との相手役っぽいし」
「・・・・・かもね」
「はぁー。フレイにまたなんか言われそう」
「はは、頑張れ。
・・・・・けど、あれだね、相手役が僕じゃなくてアスランだったらよかったのにね」
「・・・・・そんなことないですよ」


もし相手役がアスランだったらまた勘違いしてしまう。


「相手役アスランじゃなくてキラさんでよかったです」


カガリはにっこりと微笑んだ。



「・・・・・・そう」


そしてカガリの表情に浮かべだ悲しみの色にキラは気付かなかった。
しばらくしてフレイが戻ってきたためカガリはフレイと帰っていった。


「アスラン今の聞いちゃった?」


キラは二人が去った後、後ろを振り返った。


「・・・・ばっちりとな」
「やっぱり」


キラは後ろにアスランがいたのを知って、カガリにああ言ったのだがどうやら逆効果だったようだ。
・・けどこの前の様子見てたらカガリちゃんもアスランのこと好きなように見えたんだけどな。


『相手役アスランじゃなくてキラさんでよかったです』


カガリのあの声がアスランの頭の中でリピートされる。
それはどういう意味だったのだろうか。
・・・キラから名前を聞いたときも思った。
俺のではなくキラの方に参加したカガリ。
俺はカガリに嫌われているのだろうか。
アスランの胸がズキズキと痛んだ。


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