あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  新しい繋がり・後編


新しい繋がり・後編

「カガリ!
一緒に帰らないか?」

会議が問題なく終わり、帰りにアスランに声を掛けられた。
断る理由が特に無かったので「いいよ」と答えた。



ちょっと待て。
確か年齢同じだよな。
いやいや実は年上とか。
今目の前にある外国製のいかにも高そうな車。
幾らするんだこんなの..給料幾ら貰ってるんだよ、こいつ。
ちょっとアスランが憎らしくなってきた。


「カガリ乗らないのか?」
「えっ?ああ乗るぞ」


カガリはするりと助手席に乗り込んだ。
幾ら高校生時代とはいえ、好きな人の車、しかも助手席に乗るのは緊張した。
ハンドル逆なんだな。
と至極当たり前のことを考えながら車が走り出すのを待っていた。


「カガリは最近どう?」


車が走り出して、まるでどこかの下手なラジオ番組のDJ見たいなことをアスランが言った。


「うん。まずまずかな。
アスランみたいに、こんな車買えないけどな」
「はは・・」



ちょっと苦笑いだ。


「・・・・」
「・・・・」



話が続かない。
まあ仕方ないか、とカガリは半ば諦めてアスランを見た。
随分見ないうちに益々かっこよくなったよな。
ハンドルを握る角張ったそれでも凄く綺麗な大きな手。
あの頃と変わらない真っ直ぐな翡翠の瞳、そして薄い唇。
・・ってなんだよそれっ!//

私変態みたいじゃないか!
・・・・。

ラクスとまだ付き合ってるのかな。
だとしたら長いな。


「ぷっ」


えっ?


「いや、ごめん、二十面相だなと思って」
「///」


なんか、馬鹿にされてるみたいで恥ずかしい。


「・・カガリは今付き合っている人いるの?」
「えっ?・・ああ今はいないよ」
「・・そうな・・んだ」


ちょっとアスランは複雑そうな顔をした。
なんだろう。


「アスランは?ラクスとは?」


さっき思ったことを聞いてみた。
付き合ってるよって言われたら傷つくのは私なのに。


「別れたよ。
2、3年前かな」
「そう」


なんだよ「そう」って、本当は凄く嬉しいくせに。
私、大人になって益々天邪鬼に磨きが掛かったな。
けど、2、3年前ってことは新しい彼女とかいるのかな。


「フリーだよ」


アスランは私の考えていること読んだみたいにそう言った。
・・ああ、そうなんだ。


「って、ええ!?」


カガリは助手席に身を乗り出した。
もちろん信号が赤なのを確認してだぞ。


「何?」
「嘘!ずっと?」
「ずっと」
「マジで?」
「マジです」
「嘘だ〜。
アスランならきっと選り取り緑だろ?」


アスランの会社の子、見る目無いな。

フリーのアスランに見向きもしないなんて、
私なら絶対アタックしてる。


「はは。有難う。
けど、残念ながらもてないよ」


納得いかなかったけど、アスランがそういうなら仕方ない。


「・・あれ?」
「ん?何?」
「私、行き先言った?」


今、進んでいる道が一人暮らししている家とは逆方向だったから気付いた。


「言ってないよ」
「えっ嘘!」
「うん。本当」
「馬鹿っ!何で聞かないんだ!?」
「食事に行こうかと思って」
「えっ?」
「もちろん俺の奢りで、嫌?」
「いっ、嫌じゃない・・」


どこまで天邪鬼なんだ私。
素直に「嬉しい」って言えばいいものを。


「良かった」


にっこりとアスランが笑った。
・・・自惚れちゃって良いのかな。
食事に誘うって少し期待しちゃうんですけど。
なんだかドキドキする。


「着いたよ」


暫くすると、洒落たフランス料理店に車が停まった。
アスランは先に降りて助手席に側に回って、手を差し出してくれた。


「なんで私を誘ったんだ?」


ちょっとした賭けだった。


「なんでって・・」
「なんで?」
「・・・久々にカガリに会ったからで」
「うん」
「こっ、この、レストランミネルバ会社の連携店でこの前来て欲しいって言われてて、
けどこのお店、カップルばっかりだから一人で行けなくて・・」


アスランは目を伏せながら言った。


「・・誰でも良かったんだ」


小さな声でカガリが言った。
アスランは聞き取れなくて、



「何?」


と返した。



「ごめん、用事思い出した。帰る」
「えっ?」


カガリはアスランの差し出されたままだった手を跳ね除け、車を降りた。


「ばいばい」
「ちょっ!カガリ!」


後ろからアスランの声がした。
馬鹿みたいだ。
一人で勘違いして、舞い上がって、それで勝手に落ち込んでる。
今度アスランと会うときには、まず謝らなくちゃな。


「この前は勝手に帰ってごめんなさいって」
「本当だよ」


えっ?

右腕をぎゅっと掴まれている。


「アスラン?」
「あ〜あ。運動不足だな、俺。
少し走っただけでめちゃくちゃきつい」


気だるげにアスランはネクタイを緩めた。



「・・」
「あのな、俺凄く鈍いからカガリが何に対して怒っているのか言ってくれなくちゃ解らない」


アスランの声は少し憤慨が含まれていた。



「・・別に、怒ってないし」


怒っているわけじゃない、辛いだけだ。


「なら、急に帰るって言った理由は?
用事なんて無いんだろう?」
「だから・・別に」
「別に?」
「・・・」
「あのな、食事誘ったときに気付けよな」
「えっ?」


カガリは勢いよく顔を上げた。

それって・・。
あの時みたいにアスランの顔が赤くなる。
まるで、デジャブだ。
けどあの時とは違う。
アスランに彼女はいない。


「頑張って誘ったんだからお願いだから逃げるなよ」
「・・」
「・・・・////」


右手を掴んでいたアスランの手が体に絡みついた。
・・ま、まって///あれ?展開早くないか?
今、私はつまりアスランに抱きしめられている。


「俺と付き合わないか?カガリ」
「・・・///」



駄目だ。これ、これまでデジャブだ。
泣きそうだ。
けど学生の時とは違う。
悲し涙じゃ無い、
嬉し涙だ。


「カガリ?返事聞かせて欲しいな?」
「はい」



カガリは笑った。

久々にアスランに見せる笑顔だった。


「良かった」


さっきより強くアスランに抱きしめられた。


「///」





その日、私の初恋は成就した。
そして素直になる大切さをいっぱい知ったんだ。

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