新しい繋がり・前編
新しい繋がり・前編
夏。
「暑い〜。死ぬ〜」
隣の席に座っているオフィスレディが碌に仕事もせず唸りながらうつ伏せに倒れこんでいる。
今年の夏は特に暑い。
今日の平均は気温34度。
ビルが多く立ち並び、コンクリートで下は埋め尽くされているビジネス街、暑く無いわけが無い。
俗に言う、ヒートアイランド現象。
その上、つい先日会社のクーラが壊れて暫くの間クーラーが使えないというこの地獄。
「最悪だ〜」
私がどんな悪いことしたって言うんだ。
「カガリ、大丈夫?」
同僚であるフレイが心配して声をかけてくる。
フレイは大学からの友達だ。
「ん」
「確かにうちの会社最悪よね。
クーラーつかないしかっこいい男いないし。
まぁ彼氏持ちのカガリには関係ないわよね」
「・・この前別れた」
「はぁ?いつ!」
「私の誕生日に」
「・・あんたそれなんで言わないの!」
「ちょっとタイミングが合わなくて」
「タイミングの問題じゃないでしょう!もう!
・・ちゃんとふっきれった?」
フレイは凄くさばさばしてるけど実は凄く情に厚くて優しい。
私はそういうフレイが凄く好きだ。
「うん」
「ならいいけど」
別れは不思議とすんなり受け止められた。
泣きもしなかった。
これが大人になったてことなのかな。
・・高校生、ってかアスランのときはひどかったな。
振られた後、家に帰っても涙止まらなくて、
その後もめちゃくちゃ泣いたし・・目も腫れて。
「まぁ、午後からカガリ営業でしょ。
そこの会社のクーラーの風に思いっきり当たってきなさいよ」
「うん」
そう今日は大手企業に我社の製品が使ってもらえるかどうかのこの会社の命運を決める大事な会議。
こんな責任重大なことを任されるなんてはじめてだし凄く嬉しい。
「頑張れ」
フレイの応援が心強かった。
・・*・・
「アークエンジェル会社、
営業部部長のノイマンです」
「営業部、アスハです。
・・・」
なんで、なんでこんなところにいるんだ。
低音でけれど決して嫌ではない聞き慣れた声が言葉を紡いだ。
「初めまして、ミネルバ会社の企画部、
部長のアスラン・ザラです」
すっと、記憶より大きな手が名刺を差し出した。
確かに大学を卒業して、企業に就職したのは知ってたけど・・・。
「偶然ってあるんだな、なんか怖いくらいだな。
カガリ、久し振り」
うわ!
びっくりした。
話し掛けられるなんて思ってなかったから。
「ああ、うん。そうだな」
「元気そうで良かったよ」
ふんわりとアスランが笑った。
・・駄目だ。この顔に私弱いんだ。
「アスランも//」
「あれ?お知り合いですか?」
「ええ、高校の同級生です」
「・・」
ああ、そうか。
アスランにとって私は、私とアスランはもうなんでもない・・。
唯の同級生なんだ。
そう思うと苦しかった。
胸が少し痛んだ。
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