あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  藤の花 06


あの日から、ミーアがアスラン以外の男性と腕を絡ませて歩いているところを見てから、
カガリの頭は大パニックだった。
サークルに行けばアスランとミーアがいつもと同じよう仲良く話している。
なら、私が見たのは何だったのだろうか・・。
首を突っ込まないようにと警告したキラの言葉。
でも・・・・、気になってしょうがないんだ。
だって。

「カガリ、どうかしたのか?」
「ううん、何でもない」

そうか。とアスランは府に落ちないような表情を浮かべたが、
すぐまたミーアと向き合って楽しそうに話を始めた。

「(アスランの笑顔を壊したくない・・)」
「カガリ先輩、本当最近どうしたんですか?」
「えっと・・・、シン?」
「シンですけど?」
「・・・・・また、アスラン先輩絡みですか?」

シンが少し屈んでカガリの耳打ちする。

「え?」
「相談。乗りましょうか?」

私がアスランを知っているのはたぶんシンだけなんだと思う。
友達の彼氏ということもあって必死に隠している恋心。
確かに最近は気持ちを隠すのが難しくなって気持ちが漏れ出ているとは自覚しているけれど、
なぜかシンは私の気持ちに気づいていて、それでいて非難もせず、
こうして少し背中を押してくれる。
気が付いたら私は首を縦に振っていた。

「あの、俺とカガリ先輩抜けます」
「は?」

シンにぐいっと手を強く掴まれそのまま座っていた椅子から立ち上がらされた。
「はい」とカガリの鞄がシンが手渡され、シンも続いて自分の鞄を持って部室を出た。
ポカンと思わず口を開けていた他の部員が閉まった扉が確認されたと同時に喋りだす。

「・・・え?」
「もしかして!」
「うそーー!!」
「うわ、びっくりした。
アスラン知ってた?」
「・・・・」
「アスラン?」
「えっ?」
「えっ、じゃなくてシンとカガリのこと」
「いや、知らない・・・・、けど。
そういえばバイト先に2人で来てたな」
「「きゃーーー!!」」

ミーアとメイリンが色めき立つ。

「カガリって結構幼いから、意外に年下のシンみたいなタイプって合ってるのかもね」
ミーアがさらに嬉しそうにそう分析する。
「このサークル、カップル率高くない?」
「本当だ!!シンとカガリがくっついたら、3組もカップルいるよ」

サークルはシンとカガリの話題について盛り上がり始めた。
しかし、アスランはそんな周りの声をどこか遠くで聞いていた。

「(シンとカガリが・・)」

チクリと小さな痛みを覚えた。

・・*・・

「で、何があったんですか?」

シンに連れ出されて、部室塔を離れ中庭にまで出た。
シンが財布を出して、自動販売機にコインを入れて炭酸飲料を購入した。
暫くするとコップに注がれた炭酸飲料が姿を現す。
さらにコインを入れてカガリに首をくいっと動かした。
どうやら奢ってくれるらしい。
カガリは少し悩んで、ココアのボタンを押した。
明かりがついて、カップが下りてきた。
そんな自動販売機の様子を眺めながらカガリは口を開いた。

「何かあったわけじゃないんだ。
ただ」
「ただ?」
「ミーアが他の男の人と一緒に歩いてるのを先月偶然見ちゃったんだ」

ピーピー音が鳴り、ココアの出来上がりを教えてくれる。
カガリは扉を開けてカップを取り出す。
あたたかいココアは熱くてすぐには飲めそうもない。
カガリはふーふーと息を吹きかける。

「そりゃ、ミーア先輩だってアスラン先輩以外の人と出かけることぐらいあるでしょ」
「・・腕組んでた」
「・・・・まー、それは微妙に・・・?」
「それが浮気でも私の勘違いでも・・・いや勘違いの方がいいのかな。
・・別にいいんだ。私には関係ないし」

そう、キラに言われた。
部外者という言葉。
例えミーアが浮気していたとして傷つくのはアスランであってカガリではない。
不用意に首を突っ込むべきではない。
分かってる。

「関係なくはないでしょ」
「え?」
「アスラン先輩が好きなんだから、気になるでしょ」

驚いて顔を上げたカガリと炭酸飲料を飲んでいるシンの目があった。

「気になってるんでしょ?」
「うん、気になってる」
「・・・・・」
「もし、ミーアの・・浮気がばれたら、
アスランは凄く、凄く、傷つくんだろうなって・・」
7月のミーアの誕生日のために、
私が言った彼女にプレゼントする指輪の相場を鵜呑みにして、
アルバイトをしてプレゼントを買おうとしているアスラン。
アスランはミーアが好きだ。
なのに・・・。
カガリがカップを持つ手に力を入れる。
「そりゃ傷つきますよねー」
「・・・」
「けど、それはいいとして」
「えっ、よくないだろう!?」
「・・もしそれで傷ついたアスラン先輩の隙に付け入ろうとしてるなら、
カガリ先輩を見損ないますけどねー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」
「考えてないですか?」
「何言って、」

シンが手にしているカップを手で弄ぶ。

「本当にミーア先輩が浮気してて?
それでアスラン先輩が傷ついて?
なら、アンタはそのとき何をするんですか?」
「そんなの・・」

シンは何を言っているのだろう。
そんなの、そんなの。
考えたことなんてないのに。
・・・・本当に?
あの日。
ミーアと他の男の人が歩いているとき私は何と思った?

「っ・・・・」
「そりゃ。彼女に浮気されてて、
傷ついてるときに甘い言葉とキスのひとつでもされりゃ、
単純な男はすぐその気になりますけどね」
「・・・ちがっ・・・!?」

何を私はこんなに焦っているんだろう?
アスランが傷つくのが嫌だ。
・・・・。
それだけ。

「アンタの思い続けた人はそんなもんなんですか?」
「違うって言ってるだろう!!」

思わず声を荒げた。
私が必死に否定している理由。
それは・・・・・、図星なんだ。
チャンスだと思った。
ミーアがアスランと別れればいつか私を見てくれる。
・・・傷ついたアスランにつけいればいい。
心の隅で私はそう考えた。

「カガリ、先輩・・・。自分の価値下げないでくださいね」

シンの言葉は深く刺さった。

・・*・・

「なんか、かっこ悪いとこいっぱい見せちゃってごめんな」
「俺に遠慮してどうするんですか」
「そうだな。たかがシンに」

ひでぇとシンが笑う。
それで空気が和らぐ。

「何で皆見込みがない人を好きになっちゃうんですかねー」
「え」
「何ですか?その目」
「いや、シンのそんな話初めて聞いた」
「初めて言いましたもん」

シンは笑って足を進める。

「シンって好きな人いるのか?」

カガリも慌てて、シンの後を追う。

「いますよ」
「えっ!!嘘誰だろう?
私の知ってる人か?」
「秘密です」
「うわぁ、・・・・けどシン」
「?」
「私で協力できることがあったら何でも言ってくれよ」
「え」
「私シンにいっぱい相談に乗ってもらってるし。
私もシンの力になりたい」
「そう思うならまず、アスラン先輩を諦めてください」
「・・・・・それは無理だ」

「なら、言うなよ。人の気も知らないで」

「シン、今何って?」
「そのうじうじをやめろって言ってるんですよ。
バカガリ」
「はぁーーーー!!??
お前先輩を何だと」
「クスクス」

「お前、笑うなーー!!」


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