「綱吉君」

もう一度名前を呼んで九代目は彼に歩み寄る。私は扉を閉めたところでそれを見ていた。

「…君は」

そう言って彼の肩に手を置いた時、ぴくりと身体が動いた。九代目はなにも気にしてはいないようだけど、なんの反応も見せなかった彼だったから、私は驚いて少し近づいてみることにした。

「いや、ここにいる人や私は君を信じているよ。君が何もしてはいないことをわかっているよ」

ゆっくり諭すように言う。表情は見えないけれどそれは穏やかなものなんだろう。そうすればまた彼はぴくりと動く。

「大丈夫。今もう君は傷つく心配も友達が自分を傷つける悲しいことも起きやしない」

反応はみせなかった。それでもぴくりと動いたことは進歩じゃないだろうか。私がいくら声をかけようが動くことはなかったのだもの。
くるりと九代目が向き直し、私を見据えて微笑んだ。

「綱吉君にも会えた。私は帰ろう」
「わかりました、お送りします」

また扉を開け私達は部屋を出た。出た後も微笑みは変わらずあった。

「綱吉君は」
「はい?」
「彼はきっと大丈夫。恐らくもうすぐ」
「そうです、ね」

大丈夫、何がなんてわからないわけじゃない。少し先が見えた私だから、綱吉君が私達と話す彼がみえる。ぼんやりと、朧げではあるけども。
それに私より彼を知る九代目の言葉なのだ。それを信じてみることにしようじゃない。










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九代目はルーチェと知り合い。
その娘だからアリアは敬語調。

という設定←

 



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