淡々と授業は進み、ぐっと胸にくるものを押しこらえてオレは受けた。時折話しかけてくる山本。相変わらずな獄寺君。一つを除いて何も変わっていない。

「そーいやあいつも少し前に転校してきたんだぜ」
「あいつ?」

がやがやとしたユルい教員の授業の時、山本はオレにそう言った。誰、なんて聞けば赤崎と予想通りの回答に、知ってるよという言葉は飲み込む。無難にそうなんだ、なんて目を向け、知らないフリ。
その瞬間襲う吐き気。気持ち悪く頭が回る。まだまだ駄目だと慌てて目を反らした。

「転校生の多いクラスだね」
「だなあ。お前面白そうでいいやつっぽいからオレは良かったのな!」
「オレも友達すぐできてよかったよ!不安でいっぱいだったからさー」

山本と話していても少なからずもやもやとした気持ちの悪いものが体の中に巡っている。吐き気はあまりなくとも、気持ち悪いのはわりと変わらない。それでも持ちこたえているのは、やらなければならない使命感とオレなりの意志だろう。そこまで自分の意志が強くなれるとは思わなかったが。

「山本ー、転校生がまた来て嬉しいのはわかるが騒ぎすぎだぞー」
「え、あ、すんませーん」

にへらっと言った山本にくすくすと笑いが起きる。オレも苦笑しつつ、あの子が来る前はそうだったな、なんて思い出す。思い出すことで、オレはまだ沢谷翔太という人物になりきれてないとも考えた。記憶から消すことはできないが、せめて学校にいる間は忘れてボロが出ないように、たいがいのことを知らないと平気な顔してシラを切れるようにならなければならない。
先ほど感じた実感は早くもオレへの課題へと変わった。




 



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