好奇の目で見られながら校長室でそこの主と顔を合わせ、担任へと紹介された。担任も他の教員も揃いも揃ってみた事のある顔ぶれ。担任は元担任で、結局オレはまたあのクラスなのかと気が滅入る。

「転校生だぞー」

ざわつく教室。転校生多いだろ、このクラス。なんて頭に過ぎりながら見渡せば見事に知っている顔しかない。当然ながら元凶もいる。なんともいえない気持ちを抱えながら、今のオレは沢田綱吉ではないとまた言い聞かせ、精一杯の笑顔を作った。

「初めまして。沢谷翔太です」

よろしくお願いしますと頭を下げた。視線が、大半のクラスの目がオレに向いている。じんわりとした汗が手に滲む。

「転校生多いなー!よろしくな!」

聞き覚えのある声。以前となんら変わらない声。あの頃みたいな、そんな山本の。顔を上げればにかりと笑う山本が目に入った。
その声でがやがやと声をかけられる。適当に吃りつつも返し、どうやらバレていないことに安心を覚えた。沢谷翔太という人間の設定は昨日で全て覚えさせられ、今朝も復習させられた。するすると頭では出てくるが、口は上手いこと動いてくれないが。

「沢谷の席は山本の後ろなー。山本はさっきのうるさい奴だ」
「うるさいってひでー」

そんなやりとりにクラスが笑う。窓際で、どうやら隣は京子ちゃんだ。それを確認しつつ、同じように渇いた笑いをオレも上げた。

「よろしくな!オレ山本っての!」
「さっき聞いたよ。よろしくね」

席につくなりそう前方の彼は声をかけてくる。目の前のオレが沢田綱吉なんて知ったら、今彼はどんな反応をするだろうか。
全てにおいて知らないことをしないといけないのは割と辛いかもしれない。京子ちゃんと山本に話かけられながら、そう実感した。




 



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