「その薬物の人体実験とかな」
「は?」
「どんな効果が出るとかわからねぇだろ。だから自分とこの持ち孤児院の売買から、売ったようにみせて実験するんだぞ」

頭が真っ白になる。同時になんとも言えない感情が込み上げてきた。ひどい、なんて言葉では片付けられないその行い。

「他は別段不思議でもなんでもない事だから言わねーが。ツナの頭もパンクしそうだしな」
「えっと、うん」

確かにこれ以上はパンクしそうだ。自分がそこに身を置いて、見て聞いて、ならば免れたかもしれないが、聞くだけならばオレのキャパはさほど大きくはない。
ぐっと握りしめた手に力が入る。それを見た彼もまた更に表情を引き締め、真剣な眼差しをこちらに向けた。

「その感情はすべてアイツにぶつけてやれ。知らないはずがないんだ」

アイツ。赤崎華乃。ぼんやりと頭に顔が浮かんだが、吐き気もほとんどなくなった。
浮かべて思い出した甘い甘い匂い。恐らくは香水の甘ったるい、オレの嫌いなあの匂い。

「…甘い」
「甘い?」
「彼女、ずっと甘い匂いがしてたんだ。すごく甘ったるい香水かな?わりときつめなやつ。オレ以外は皆好きみたいだったけ、ど…」

一気にリボーンが険しくなった。表情も雰囲気も。それに怯んでオレは言葉に詰まってしまう。

「香水だな?」
「た、多分。どうしたの?」
「もしかしたら獄寺達が変わった理由がそこにあるかもしれねぇ。俺が調べたやつによれば、匂いによる洗脳ってのを奴らは研究してたからな」
「じゃあもしかしたら獄寺君達は!」
「可能性はある」

自分の意思ではなかったのならば。洗脳だったとしたならば。
可能性があると聞いてオレ自身気分が明るくなる。自分でもおかしいとは思う。あれほどめった打ちにされたのに、嬉しく思うだなんて。
顔にもその気持ちが表れていたのだろう。オレを見てにぃと笑うリボーン。彼もまた雰囲気もろとも和らいでいた。

「オレ、また頑張れる」
「またじゃねぇ。更にだぞ」
「そうだね」

前よりもやる気が増した気がした。



 



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