そこからは曖昧にしか覚えてない。学校に行けば日々繰り替えされる暴力。制裁や同じ苦しみをと奮われる暴力だ。
お兄さんや雲雀さんにも「見損なった」と奮われた。あの雲雀さんが自分ではなく他人のために暴力を奮うなんて、オレには信じられなかった。他人の為と言えば彼は否定するかもしれないけれど。京子ちゃんだってオレを信じてはくれなかった。なんでそんな嘘つくの。その言葉に泣きたくなった。

「テメーはまだ華乃ちゃんに謝ってもいねぇのかよ!」
「いつになったら懲りるんだ!」

毎日繰り替えされるそれ。素手だった彼らもいつしか箒やどこから持ってきたのかわからない棒、竹刀、ラケットなんかに変わっていった。
クラスメートだけだった暴力も、いつしか学校中に広がって出くわす人に出くわす人にオレは日々恐怖する日々。だって不良や不良ぶった人達からは殴られるんだ。
気付いたことは制裁なんて暴力を振るう人の大半は自分の日々のやり切れないこととか、ストレスなんかをオレに向けて発散してるということ。もう一つは顔があの赤崎華乃のように醜悪に笑っていた。
そのことは獄寺君、山本も例外じゃなかった。笑いながら各々の武器を手にオレを傷つける彼ら。何よりもそれがショックだった。バットで殴る、刀で切りつける、ダイナマイトを投げくる。どうしてだと何度も言った。その度に返されるのはオレがどうして彼女を傷つけたのか、どうしてまだ謝りもせずのうのうと学校へ来るのかと。言うことはクラスメートと変わりはなかった。
次第にボロボロになるオレの身体と心。それでもオレは言い続けた。

「オレはやってない!信じてよ!やってないんだ!」

馬鹿の一つ覚え。まさにぴったりな言葉だろう。信じてもらえるわけもなく、嘘つきと罵られることをわかっているのにそう言うのだから。
そんなオレの異変に気づかない家の者達はいない。生憎か、はたまた幸いか。オレが目に見えてボロボロになる頃にはリボーンは家にいなかった。少し家を空けると出て行ったっきり彼は帰って来なかったのだ。最初の頃こそ心配していてくれた母さんや居候達。だけど何をきっかけにかはわからないが、オレが悪いと一方的に決めつけられた。何があったの。そう聞いても明確な返答は得ることはできなかった。
つまりそれはオレの居場所はどこにもないということで。学校をサボるにも行く宛てなんかないオレ。家にも居場所はなくなってしまったからそこにいるのは居心地が悪すぎた。
オレはだんだん暴行を受けるうちに色々麻痺してきたみたい。きっとそれはエスカレートする彼女の言い分もあってのことだったかもしれない。何を言われても、何を罵られても、たいがいのことは理解するのをやめていたらしい。
そんな折りだ。毎度のごとく倒れたところで止むことはないはずのリンチに意識を飛ばしかけた時、暴力が止んだ。顔を上げればどういうわけか赤崎さんが山本と獄寺君を止めている。一体どういうことなんだ。霞む目に映るのは二人に何かを耳打ちした彼女の姿。疑問がいっぱい過ぎてわからない。それでも暴行は止み、放課後だった故に撤収だと山本が声をかければ鞄を持って各自教室を出ていった。

「こんなことの原因を作ったお前にボンゴレが処置を取るんだと。テメェに従ってたオレが恥ずかしいぜ」
「お前を信用なんて出来ないのな。ま、もうお前なんか親友じゃない」

嫌に耳に残って理解させられた。全てを切り捨てられたような気がした。もう何も彼らには届かないのだと。痛みで動かない身体と喋れない程の言葉の衝撃。せせら笑うかのように出て行った二人の姿はより一層霞んで見えた。

「沢田くーん」

そんなオレの前にしゃがみ込む彼女。お前が、お前が全ての原因なのに。

「言ったはずよ?あたしは貴方の大事なもの全て奪うと。全部あたしのものだって」
「…お前、が…」
「ふふっ、わかっていたと思うけど、聞いたでしょ?オトモダチはいなくなっちゃったわねぇ」

悪魔の笑顔。まさにそんな感じに見えた。けらけらと笑ってじゃあね。なんて教室を出る彼女に歯痒さと悔しさで、静かにオレは突っ伏せて泣いた。


 



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