ぺしゃんと血が流れる手を握り座り込む彼女。なにがなにやらわからず立ち尽くすオレ。服には血。足元に血のついたカッター。
何分と経ってないだろう。だけどオレにはひどく長く感じられた。

「赤、崎さ、ん…?」

搾り出すように声を出せばにぃと笑う彼女。なんとも頭が痛くなる。吐き気もした。立ってられないかのような。それ程までに痛い頭痛。
でもそんなオレを無視して時間はすぎる。バタバタと足音がして屋上の扉が開いた。

「なっ…」
「赤崎…?十代目?」

屋上にオレがいると知ってるクラスメートがすぐに駆け付けて。クラスメート、つまりは中に獄寺君や山本もいるわけで。

「どういうことだ…?」
「なんで赤崎さんが血を流してんの?」

口々に言う疑問と疑惑。オレはといえば金魚のように口をぱくぱくとするしかできなかった。

「ひっ、く…ひっ…沢田君がぁっ…!」

沢田君が。オレが。何をした。オレは何もしちゃいない。
ぎっと睨まれるオレ。そこで遅いながらも理解した。

『全部あたしのものよ!』

それはオレの立ち位置を奪うということ。陥れられたんだ。オレが持つものを奪うために。

「ダメツナ!」
「テメーなにしてんだよ!」

気づけばオレを取り囲むクラスメート達。恐ろしい形相でオレを睨み付ける。

「オレ!オレなんもしてない!」

足りない頭でもわかってる。そんな言葉信じられないことくらい。切られた彼女に血のついた服を着るオレ。これで信じろなんて無理な話だ。
それでも、それでも。騒ぐ人達に目もくれず、オレが仲間と信じる二人を見据えた。

「獄寺君!山本!」

二人だけでいい。二人だけでいいから。オレを信じてよ。

「お前がそんな奴だったなんてな」
「オレはあんたに裏切られた気分だ」

嫌に耳響いた。理解できない、したくない。そんな軽蔑したかのような目で見ないで。お願い、オレはなにもしてないんだ。どうして。
数秒後、ようやく理解した頭は何かに殴られたような衝撃が走った。外部からのダメージか、内面のショックの大きさか。それさえわからないままオレの記憶が途切れた。


 



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