ここじゃなくてまだ並盛にいた頃だ。未来から帰って何気ない日常がまた始まった。やっぱり騒々しさはあっても、オレには楽しめる余裕と心地良さがあった。
数日が経ち、転校生がやって来た。愛嬌のある女の子なんだとその頃は思えた。ただ異様な甘ったるい匂いを放っていて、オレはその匂いは好きじゃなかったんだ。隣にいられたら顔をしかめそうになるくらい甘いんだもん。
彼女には気さくな山本が話かけたり、他クラスメートが話かけたりで誰も放っておきはしなかったけど、転校生はそんなもんでしょ。あれよあれよで一躍彼女は人気者。なんだかんだ目立つ人達と一緒にいるからかオレにも彼女は話かけてきた。話かけられる度に何故だか気持ち悪い感覚はあったけど、それはなんだか当時のオレにはわからなかった。
そんな時から三日程経ったくらいだろうか。オレは運悪く教員に捕まり、次の日に使うという資料を運ばされた。運び終わって運ないなー、なんて思いながら自分の教室に戻れば誰もいないはずの場所に一人の女の子。そう、あの転校生。

「沢田君」

にっこりと微笑む彼女に言いようのない寒気が走る。気づかれないようにどうしたの。なんて尋ねれば見たこともない醜悪な笑みに早変わり。

「沢田君ね、ボンゴレの次期ボスなんでしょう?」
「な、なんのこと?」
「とぼけないで。知ってるのよ。ボンゴレ十代目」
「…どうして、それ」

獄寺君や山本が言っているのを聞いて、またかよ。といったクラスメートの視線じゃない。マフィア・ボンゴレを知ってる視線。ごっこ遊びじゃないとわかって言っている。

「ふふっ、驚いた?トマゾもボンゴレもいるんだから、もう一人マフィアがいてもおかしくないでしょ」

頭の悪いオレでも簡単に理解出来た。この子もマフィアだということを。言葉に対して普段のオレならおかしいよ!とでも言えただろう。だけどそんなこと言える空気じゃない。

「オレに何か…?」

だからと言ってこの二人きりのタイミングでばらさずとも、皆いる中でばらしたって問題はないだろう。わざわざ二人きりを狙ったのはオレに何か用事があるから、そんな気がした。

「話が早くていいわ。消えてくれないかしら」

自分の席からすくりと立って言った彼女の言葉の意味が一瞬理解できなかった。




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やっと過去!
書きやすさも兼ねて当分はツナ目線。

 



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