驚いて目を開ければオレは抱きしめられていた。暖かく、包みこまれていた。
「大丈夫。私も、私達は君を傷つけない」
更にぎゅっと、オレは抱きしめられた。ああなんて暖かい。
気付けば震えは止まっていて、オレは涙を流していた。涙のわけなんて考えればそれはもう、きっとたくさん。とめようとしてもオレの意志に反して涙は止まりはしなかった。
「泣いていいわ。あなたは泣ける。泣きなさい」
そんなオレの心情を察してか、オレにそう言うもんだからオレは声を上げて泣いた。アリアさんに縋り付いて、それで泣いた。
大空のアルコバレーノは欠番だという。だけどもアリアさんは大空のアルコバレーノの娘で、やっぱり大空の如く包み込むんだ。オレだけじゃないだろう。きっと他の人だってそう、同じように。
ひとしきり泣いた後もう大丈夫だと告げて、上手く笑えはしないけどへにょりと笑えばまたアリアさんは笑ってくれた。
「やっと笑った」
「上手くは笑えませんけど」
「それでもいいのよ」
なんと言ったら良いのかはわからないけれども、やっぱりユニの母なんだろうなと思えた。似てる。顔だけじゃなくて。
「あ!」
突然叫んでオレから離れた。そりゃあもう驚いたけど、何かと思えば持って来たご飯の方へとぱたぱたと駆けていった。
「冷めちゃった…」
「いいですよ」
やっちゃったとでも言いたげな顔をアリアさんがするから、オレは思わず吹き出した。まるで母さんが珍しく料理に失敗した時みたいだ。そう、母さんが。
「いただきますね」
よろよろと椅子から立ち上がり、ローテーブルの前まで行きオレはそう言った。ごめんねと申し訳なさそうに笑いながらアリアさんは何度も言うから構わないとオレも笑って食べた。胸に小さなしこりが出来たのは気づかないフリをして。
≪ ≫