あれからも綱吉は眠り続けていました。両親が帰ってきてようやく目を覚ましたところです。
「おとーしゃん!」
目を覚ました綱吉は久しぶりに会う父親、家光に飛びつきました。お父さんもそれは嬉しそうに大きくなったなあ。と綱吉を抱き上げます。
「ツナぁ、明日はパパと観光、いや、お出かけでもするかー!」
すりすりとほお擦りをする父親におひげいたい。と言いながらも綱吉自身、嬉しそうです。
「すぅー!」
「そうかそうか。どこ行こかなあ、ツナぁ」
「ツッ君にはわからないわよ、ねー」
お父さんに抱えられて、お母さんに頭を撫でられる。確かに微笑ましい家族がそこにありました。九代目ことおじいちゃんは嬉しそうに目を細めますが、リボーンは違いました。どこか切なそうに彼ら家族を見ていました。
「俺はもう行くぞ」
ボルサリーノを深く被り、リボーンは先程綱吉と寝ていたソファから立ち上がりました。
「なんだリボーン、もう行くのか?」
「もう少しゆっくりしていけば良かろうに」
お父さんもおじいちゃんもそう言いますが、リボーンの足は扉に向かっています。
それを見ていた綱吉がもごもごとお父さんの腕から飛び降りて、駆け出しました。向かう先はリボーンのところ。
「やあっ!」
がしりとリボーンの足にしがみつきました。リボーンも、もちろんおじいちゃん達も驚いて目を丸くさせます。
「リボーンはツナというの!」
「…………はあ?」
つまりリボーンも一緒に居ろと、綱吉はそう言います。それはしっかりとした意志表示でした。
「どっかいっちゃやなの!」
「お前なあ」
真っ黒なリボーンの瞳にじっと見られようと綱吉も怯みません。同じく日本人にしては色素の薄い瞳でじっと見つめ返します。
「あらあら。すっかりリボーン君に懐いちゃって」
綱吉の人見知りはお母さんもよくわかっています。だからこそこの数時間で綱吉が懐いたことへの驚きと、喜びがありました。
反対にリボーンがいいのかぁあ。とお父さんはどこか寂しそうではありますが。それはそれ、というやつです。
「…俺は」
「ヤァダ!リボーンはツナといっしょんいうのー!」
ぎゅうと更に足にしがみつく力を込めます。リボーンにとって痛くはありませんが、こうまで小さい子どもに縋り付かれるのは経験値が皆無なわけで。引っぺがそうにも離れそうにないことくらいもわかります。
「…わぁった。わかったよ。一緒にいてやるよ」
「きゃあっ!やくしょくよ?あしたもいっしょんおでかけよ?」
ため息一つついてリボーンが根負けしました。一緒にいてやると言った彼の言葉に綱吉は大きなお目を更に開いてきらきらとさせます。
「…ツナはやらんぞ、リボーン」
「なんのことだ!」
嬉しの半分、綱吉がこうもリボーンに懐くと思っていなかったお父さんのヤキモチ半分。ぼそりと横目でリボーンを見ながら呟きました。