それからはよく覚えてない。疲れだろう。四人がオレそっちのけで何やら話し合ってたところからオレは眠ってしまったらしい。
ただ起きれば朝になっていて、異様にランボとイーピンとフウ太のちびっこがべたべたとしてきたのには笑った。何を聞いたか知らない。大丈夫だよと笑えば少しは普段のようになっていたけど。リボーンはといえばオレが目を覚ましたら出かけて行った。
獄寺君が迎えに来て、一緒に登校してる途中で山本に会って。いつも通り。いつも通りなはずなんだ。なのにいつもより距離が近い気がした。物理的な距離が。
学校についてからもそれは同じで、雲雀さんに会った時なんかは警戒心剥き出し。珍しく山本も。雲雀さんに鼻で笑われて、馬鹿なの。って言われていた。

「なんかオレ、姫みたいじゃん。騎士に護られてる姫」
「似合うじゃん」
「やだよー、オレ男だし」
「大丈夫っス!必ずオレが護ります!」

笑っていても、ぴりぴりしていて。そんなしなくてもいいのになあ、なんて思って靴を履きかえて、教室を目指す。変わることはない。二人も一部を除けばばごく普通だ。
でもそれは教室に入ってがらりと変わった。じっとりとしたいくつもの視線を浴びせられる。異様な空気。なに、これは。

「ツナ?」
「え、あ、うん。なんでもない」

平静を装う。視線が痛い。目力だけなら昨日の四人の方があったけど。
一度席に着くまでそれは止むことを知らなくて、着いたら着いたでぞろぞろと数人がやって来る。なんなんだ。

「お前赤崎さんフったって?」
「つーか告られたって?」

男子連中に取り囲まれてがいがいと言われる。転校生みたいに。何より情報早くないか、あんた達。

「そうだけど…」
「はあ?お前が告られといてフったぁ!?」
「何考えてんだ!あの赤崎さんだぞ!?」
「何様だよ!ダメツナのくせに!」

始まる罵倒。オレにだって選ぶ権利くらいください。ダメツナには選ぶ権利もないの。

「ちょーい!待てって。な?」
「なんだよ山本」
「ツナはなんもしてないだろ?」
「隣のクラスじゃ一番可愛いのをフったんだぞ?」
「ああ?だからなんだよ?」

オレにとっちゃ心強い味方だけど悪人面になってるよ獄寺君。睨み方が目力すごい。
後ろから二人がオレを挟んで立つ。オレは感じないけど、オレにぐだぐだと言ってきた人達が後退りをするから威圧感が半端ないのがわかる。

「あ、あれ?沢田君!?」

オレの推測の範囲の元凶。やっぱり寒気が全身を包む。勘は当たってたんだろうか。

「ちょっと、大丈夫なの?」
「大丈夫、だから…」

もう気にしないで。そう紡ごうてした言葉は周りに掻き消された。
どうして沢田なんか。沢田なんかやめとけ。ダメツナなんだぞ。否定の言葉。オレはこれで傷つきそうだ。そんな言葉に笑顔でそんなことないよ、なんて流す赤崎さんはちらちらとオレを見ながら近寄ってきて、ほらもう目の前。

「沢田君その怪我、ひどい…」
「そうそう。結構この傷ひどかったのなー」
「私傷薬持ってるよ!良かったら、その」
「オレが持ってる。換えの包帯もガーゼもある」

雲雀さんより敵意剥き出し。そんな状態で中々怯まない彼女もすごい。

「お前が見なくてもオレらが見るのな」
「だからお前教室戻れば」

まだ授業が始まるには早い。今日は早かったからかまだ時間がある。
二人の声は冷たくて、聞いているだけでも怖いのに彼女はまだ食い下がる。でも、だって、そんなの聞きたくはない。周りも煩いし、離れたい。

「沢田ぁぁああ!」

もう朝からしんどいと思っていれば大変元気な声にぴたりと音が止む。お兄さんと思わず立ち上がって、あっけにとられていれば手巻きされる。

「まだ授業まで時間あるし、行こうぜ」
「十代目行きましょう」

二人に手を掴まれて、まだ呆けている状態の中、わけもわからずただ着いて行く。
そして行き先はうるさいのは来ないだろうと、提供される応接室。もちろん雲雀さんは健在だ。

「ごめ、なんかオレ」
「わけがわかってない、そうだろ?」
「……そうです」

頭がついていけていない。一緒にいた二人もあまり理解していないが、オレよりはしているようだ。

「順を追って話そうか」
「オレ達がまず冷静にあの子に対処したことからな。あれは小僧だ」
「え?リボーン?」
「そうです。リボーンさんがあの女が仕掛けたのなら必ず十代目に接触すると言いまして。で、悲劇のヒロインになるか、私優しいでしょうアピールをするかどちらかだと。後者でしたね」

すごいリボーン。オレそんなこと考えてなかった。中学生の言動くらいお見通しか。

「先輩が来るとは知らなかったけどな」
「今朝早くに言われたのだ。事情と面倒な事になっていたら呼んでここに連れてこいと。全く極限に酷いことだな!」
「そうだったんですか。でも雲雀さん、いいんですか?」

お兄さんにも有り難かったけど、人の近寄らない場所を提供してくれる雲雀も有り難い。群れることを真剣に嫌うこの人なのに。

「もしかしたら君と戦えなくなる、なんて言われたら仕方ない。不本意だけどそれは変えられない」
「てんめ!素直に力貸せよ!」

いや、雲雀さんだからね。しょうがないよ。

「赤ん坊が言うには、可能性として君の周りを四面楚歌にするかもしれないらしいよ。自分の為に」
「そんな…」

あんまりオレ好かれてもいないのに四面楚歌って。そんなのあんまりだ。

「大丈夫だ沢田!」
「周りがそんなのでもオレ達は味方だからな」
「言ったでしょう。オレ達が貴方を護ります!」

周りがどんなになっても、オレの周りは変わらなければきっとオレは大丈夫だ。力強い仲間達がこうやっているんだから。

「ありがとう」

オレも皆に何もないように強く生きたいと笑う彼らの中で思った。



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