「そいじゃ、終りにしましょうか」

へらへらとお姫様気取りな女に向かってオレは言葉を投げかけた。
時間は少し遡る。少し前並中に一人の女子生徒が転校してきた。異臭を放つわ、見た感じからしてぶりっこだわのオレが好きではない女子生徒だった。超直感なんざなくとも見抜けそうなぶりっこだったのにも関わらず、なんとまあ皆様騙された。風紀違反だというのに雲雀さんが何もしなかったのは異臭で近寄りたくないからだそうだ。これは笑った。
その転校生。こいつがまたくせ者で、イタリアのマフィアの娘だった。更にはボンゴレの何代目かは忘れたけども過去ボスの血縁者らしく、自分がボンゴレのトップに立つのが適任なんだと言いやがった。オレ的には構わないのだけど、女に騙されていないリボーンにぐちゃぐちゃと言われるのが面倒だし、今九代目に使える者達が可哀相だったので無理だと答えた。そんな言い方してないけど。そうすればどうだ。豹変して何か喚き散らし、叫び声を上げて自分を叩きつけ倒れ込んだ。ドン引き。気が触れたのかと思ったけども、それを聞き付けやって来たクラスの人間共からすればオレがしたようにしか見えずオレそこでリンチ。やり返すとかはキャラじゃないので受け身だけ。地味に痛いけど我慢の子。
三日も経たぬうちにオレは完全に悪者。一週間経てば並盛で四面楚歌。家族、仲間、友達、先輩。方法は違えど皆に虐げられた。雲雀さんは一部始終を監視カメラで見ていたが関わりたくないとオレを放置。オレが可哀相。ボンゴレも九代目の反論虚しくオレはそんなことをする人間をボスになどできないとボンゴレから除籍。オレはお前らの為に拒否してやったのというのに。リボーンはまだ残ってはいる。そんなリボーンのみが「お前はそんなことできねーだろ」と正論を。

「最強のアルコバレーノなだけあるね」

と笑えばお前そんな笑ってられる状況じゃねぇよと怒られた。心境的にはそうでもない。上辺の付き合いがなくなっただけ気が楽ですよオレは。ダメツナから本来の沢田綱吉をちゃらあんと見せれば本気で信じられないと言われたのはいい思い出。
それから刀傷やら火傷やら作って帰って来た日には本気で呆れていらっしゃった。あいつらには失望したと。期待してるから失望なんかするんだよ。
それだけではおさまらず、日々リンチは続いていたけどもオレだって人間である。痛いの嫌いだし、いい加減に欝陶しくもなり、全て明かして終わらせようかと立ち上がったのだ。

「テメェが終わらせる?何をだよ?」
「え、決まってっしょ」

ほれ、と放課後の教室にばらまいたのは写真。街中でのオレの写真。

「なによこれ」
「アンタがオレに殴られただの暴言吐かれただの言ってた時のオレ様」

一枚を広い上げて時間を指差す。街中の監視カメラを写真にしたもの。故に偽造なんてできません。夕方とわかる下校中のオレであり、周りに他の並中生はおらずとも他校の生徒はいるわけで、それは偽造であることがないとわかったようだ。偉い偉い。

「オメーがツナに何かされた時、ツナは別の場所にいたんだぞ」

机に立つリボーンが追い打ちをかけるようにそう言えば、女はみるみるうちに青ざめる。疑惑の、不信感のこもった視線も向けられる。お前らの言う絆ってなんだ。脆過ぎねぇかよ。

「お前…」
「極限に本当なのか」

この場で言葉を発しない獄寺君は絶句状態。なんとか言ったらどうなんだい。促そうとした時に、何かがはち切れたような高笑いがこだました。

「だとしたら!どうだって言うのよ!ツナ君が次期ドン・ボンゴレの座を素直に渡さないからよ!ツナ君が悪いのよ!」

これ八つ当たりじゃないの。オレ何も悪くないでしょうが。

「頭オカシイんじゃねぇの」

ぽろりと零せば彼女には睨まれ、リボーンにはお前それ言っちゃ駄目だろと言われた。だって頭オカシイだろ。

「おかしくて結構!貴方は除籍されたのよ!もうボンゴレに関わりはないの!」

そうだね。関わりないよね。でもムカつくもんはムカつくんですよ。首謀者を前に、やられてはいそうですか、なんてオレ我慢の子でもできないの。
彼らとの間を縮めて、彼女へと一歩一歩近づく。彼らは後退るけども、彼女だけは強気な見栄を張ったまま頑張ってはいる。けど青ざめているよ。

「やられたらやり返すんだよ」

顔をぐいっと近づけてにっこりと笑ってやる。さすがに耐え切れず彼女から見栄が消え、表情が怯える。やだなあ、オレが脅してるみたいじゃん。
脅すんじゃないんだよ。こうするんだよ。

「オレはそんな人間な、のっ!」

うりゃっとみぞおちに一発入れてやる。蛙が潰れたみたいな声を出すけど知りません。彼女はそのままがらがらと崩れた。

「ツナ……」
「ふふっ、猫被る必要性なんかなくなったんだよ」

もういいじゃん。止めた。オレはオレらしく生きるって決めたんだもん。元友人の彼らが呆気に取られて呆然としていようがオレは知らないよ。
崩れて咳込む彼女の髪を引っ張り、腰を屈めてまた顔を近付ける。もう完全に恐怖に満ち足た顔してる。

「そうそう。君言ったよね。オレはもうボンゴレから除籍され、関わりないと」
「だ、だからなによ…」
「沈黙の掟って知ってんだろ」
「知ってるわよ!知らないわけないでしょ!」
「だよね。復讐者の皆さん、この娘ですよ」

ぱっと髪から手を離し女が振り向けば教室の入口に復讐者が。連絡したのはリボーンだけど。

「復讐者…」
「おい、これってまさか」

まさかだよ。

「罪人コイツカ」
「そうだよ」

さあ主犯を連れて行って頂戴。

「了解シタ」

骸が連れ去られた時のように彼女に首輪を付けて引っ張って行く。

「嫌っ!アンタ達見てないで助けなさいよっ!待って!や、いやぁぁあああああああ!」
「バイバーイ」

叫ぶ女に笑顔で手を振ってやる。すっきりした。彼らが連れて行かれないのは正式なボンゴレファミリーではないからだ。まだギリギリ一般人なのが救いだったね。
さてオレの用事は終わった。帰ろうか。

「リボーン帰るよ」
「こいつらどうすんだ」

教室から出ようと戸に手をかけるオレに、ぴょんと机を渡って来たリボーンが問う。どうするってどうするよ。

「…ツナ、悪かったのな」
「じゅうだ、いや、沢田さん。すみませんでした」
「極限に悪かった」

今更謝られても。きちんと事実確認すらしないでオレを悪者と決めつけたくせに。

「謝罪なんていらないから。だから金輪際オレに関わるな必要最低限以外で喋りかけるな。オレはお前らなんかいらない」

周りに振り回されて、仲間だとかほざいてた割に信じやしない。そんな友人いらないよ。自立できる歳じゃないからまだ少しばかり親には世話になるけども、実の子すら信じない親だってそう。だから、オレに関わるな。馴れ馴れしくなんてさせねぇよ。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -