オレが嵌められたと気付いた時には身体は傷や痣だらけになっていた。気絶していたらしく、辺りは暗くなっていて、今日獄寺君と山本が家に来るって約束していたのになあ。なんて申し訳なく思った。
痛む身体を引きずって家に帰る。通学路だから家まで遠くはない。遠くはないはずなんだ。それなのに上手く身体が言うことを聞かないせいか、とても遠く感じる。早く、早く帰りたい。
人の家の塀に身体を預けてみたりしながらも、ようやく家が見えてきた。ほっと安堵しながらも後一息だと自分に喝を入れながら、ずりずりと動きの悪い足を前に前にと進ませる。

「…う……め?」

微かに声が聞こえた。誰、と思いながら振り向けば大事なオレの友達。

「十代目!?」

はっきりと聞こえて、獄寺君と呼ぼうとしても口からは空気しか出なかった。駆け寄って来る彼が見えて、何故だか足に目がいって。あれ、なんて頭の隅で思った時にはもう地面とまた向かい合うはめになっていた。



「う、あ…」

目が覚めた、という感覚と共にオレなんで寝てたんだろう。と身体を起こした。途端にずきりと痛む身体。そうだ。家の近くで倒れたんだ。
じゃあ何故オレはオレの部屋で、ベットにいるんだ。そんな疑問は俯いた顔を上げることで解決された。

「良かったぁ…十代目ぇ…」
「ツナ大丈夫か?」

心配そうな二人の顔と、安心したようなもう二人の顔が見えたからだ。

「ありがとう、大丈夫。獄寺君だよね、運んでくれたの。ごめんね」
「気にしないでください!」

泣きそうな顔してぶんぶんと頷くからなんだかおかしくて少し笑う。オレが笑っただけなのにちょっとだけ場が和んだ気がした。

「勝手に手当はさせてもらったわよ。出血はそこまで酷くはなかったけど、打撲は酷かったわ。折れてなかったのが幸いね」
「折れ……いや、ビアンキありがとう」

頭がぼんやりして認識していなかったけど、見れば確かにひどく打った所に湿布がしてあったり包帯が巻かれてある。ずきずきと全身が痛むからひどかったのだろう。青痣が多分いたるところにあるんだと思う。

「明日は学校休んで病院行った方がいいかもな」
「その方がいいでしょうね」
「え…?」

頷く皆に待ってと声を上げた。確かに行きたくはないけど、でもなんとなく、行かなきゃ駄目な気がして。

「行くよ!」
「十代目!?」
「無理すんなよツナ」
「だって、行かなきゃ…負けたみたいだから…」

ぎゅっと足の上で握る手を見つめる。意外にオレは負けず嫌いだったらしい。いや、負けず嫌いになったらしい。
だから行くんだ。そう言おうとすればリボーンを除く三人がきょとんとした顔をしていた。リボーンはなにやらよくわからない。そこでようやくオレは黙っておこうと思ったことを言ってしまったことに気付いた。失敗した。

「お前…」
「いや、そのっ、えーっと」
「いつもみたいなドジじゃねぇのはなんとなくわかってた。傷の量と質がおかしいからな」

この黒い大きな瞳に悟られる。見透かした眼。隠したくとも読心術があるんだけれど。
恐る恐る皆の目を見て、こんなに心配されて、心配をかけているんだと自覚させられる。そんな眼をさせたいワケじゃないんだ。じっと息を飲むようにオレを見つめて、一言も話さない。穴があくよ。なによりまいってしまう。

「あー……話すよ」

こくりと頷く彼らに後戻りもなにも出来ない。ぽつりぽつりとオレ話し出した。



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