小さな町内の、そんなに時間の経っていない情報だ。三日もあればすぐさままとめ上げた。
まとめ上げた調査内容を見て家光は唖然とする。小さな嘘の積み重なり。どうして綱吉の周りはこんなことに気付かなかったのか、少し調べればわかることだったのに。友人であったリボーンにも失望し、アルコバレーノと言えどこんなものかと嘆きもした。
裏付けをとっていたターメリックは家光に言われ、本部に向かい九代目に報告するべくイタリアへと飛んだ。

「集まってもらおうか」

ぽつりと家光が漏らせばバジル、オレガノが元守護者である彼らの下へ向かう。集まる場所はもちろん拠点にしているホテルである。
一時間もすれば守護者であった者達、リボーン、居候と伝えるべき相手は揃った。事を起こした首謀者がいないのはその方が楽に話を進められるだろうと考えた為だ。

「こっちにいるのは知っていたが、急にどうした?」
「門外顧問直々なんて何があったんですか?」

リボーンや獄寺を筆頭に部屋に集められた彼らは何もわからないと肩をすくめる。当然だ。自分達に否はないと考えているのだから。
「話はこれを見てからだ」

一人掛けの椅子に座ったままちらりと家光がバジルに目を配る。合図のように手際よく、まとめた資料のコピーを彼らに配っていく。渡された資料を見ながら彼らは眉をひそめ、何がしたいと家光を見た。

「沢田綱吉の死亡について?自分から飛び降りたんじゃねーのか?」
「いいから読め。チェデフに、ボンゴレに誓ってこれは事実だ。話はそれからだ」

睨むように全員を見た後、口を出した山本も他も皆、ぱらぱらと数枚の資料を読んでいく。家光の隣に立つバジルは心底辛そうな顔をしていた。
資料に書かれているのはまぎれもない真実。綱吉の事実、女子生徒の嘘。訴えかける綱吉に否はなかった。もちろん自分から飛び降りたことに変わりはない。精神的に追い詰められていた綱吉が最も最悪な行動をとってしまった。その事実は揺るぎないのだ。

「お前、これ…」
「リボーンよ、アルコバレーノが泣けるな」

嘘なんかではないと肯定する言葉。
読み終わった彼らは続々と顔から色が消えていく。ランボやイーピンにはわからないだろうと、別室でオレガノが説いている。
最後の一枚には綱吉が書き残した手紙がコピーされてあった。紛れも無い綱吉の字。ボロボロになりながらも書いた字であろうことが、コピーされた物からも見て取れた。

『短い間だったけど、一緒に過ごした時間は本当に楽しかったんだ。嘘なんかじゃない。
でもオレが訴えても信じてはくれない。オレは皆を信じてたよ。オレ達はそんな薄い絆じゃないと思ってた。
だけど駄目みたいだ。もう精神的にも辛いし、オレは何もしてないけど、オレが消えて解決するならオレは皆の前からいなくなるよ。
また皆と笑い合いたかったなあ。もう出来ないんだけど。
どんな記憶でもいいからオレのこと、少しだけでも覚えていてくれたら嬉しい』

涙の跡だろうか。所々滲んでいる。傷から出た血の跡も端の方にはあった。

「俺がお前らを責める権利はないがな。俺も気づけなかったし、救えなかった。だが、綱吉は最後までお前らを信じたかったようだぞ」

ぱちんと何かが弾けた。
その場に崩れ落ちる獄寺に山本。クロームにいたっては泣き崩れている。ボルサリーノを深く下げるリボーン、雲雀やビアンキも俯いて顔は見えない。了平も俯き、ぐっと握りこぶしを作り震わせているし、フウ太も俯いて今にも泣きだしそうである。

「この後お前らがどうするかは勝手だ。好きにしろ」

身の振り方を考えろとでも言わんばかりの家光。ぽんとバジルの頭に手を置いて、椅子から立ち上がり彼は部屋を出て行った。
失ってから気付くとはまさにこのことだろう。バジルも彼の後を追い、のこされた者達によりお通夜のような空気が部屋を満たしていた。



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