「久しぶりにこっちに来なよ」

そう雲雀さんに言われたのは、新ボンゴレが出来て半年ちょっと経った頃だった。
目の回るような忙しさは半年でおさまり落ち着いてきて、自分の情報屋としての仕事もその頃には多少板に付いてきた頃。雲雀さんからとある企業の情報が欲しいと言われ、そのついでに日本へと渡ることにした。もちろんトンノルという人物として。

「久しぶり」
「お久しぶりです」

キャリーを片手にあれから会っていなかったや。なんて少し考える。半年で簡単に人は変わらないのだけれど。
場所を雲雀さんのところ、並盛のカフェへと移して少しの世間話。仕事はしたよ。日本の企業故に若干イタリアからだと面倒なことはあったけれども、そこは素晴らしきネットワーク社会。オレ、ハッカーですから。
調べ上げた物を渡して、この後どうするかなあ。と予定を立てずに来たことに少し後悔した。

「後でうちに来るんだろ?」
「風紀財閥にですか?そうですね、ボンゴレに伝えることとか渡す物があるでしょうし」

ふふんと笑う彼。
基本こういう提案は何かあるときじゃないと彼は言わない。だって後輩とは言え、オレは部外者なんだから。
やっぱ日本はいいよねえ。なんて思いを馳せてガラス張りの壁というか、そこを見ていれば見つけた女の子二人組。こんな一番見渡しのいいとこ座るんじゃなかった。安心しきってた。

「どうかしたの?」

ちょっと嫌そうな顔をしていたようだ。オレ達がいる店内に入るのを見て更に嫌になったけれど、指をさせば彼はちらりと見て納得の眼をオレに向けた。

「考えたら日本に戻ってきてるなら守護者にも会う確率あるんですよねー…」
「わかってると僕は思ってたけど、そうじゃなかったみたいだね。抜けてるというか、ドジだよ君」
「知ってます。わかってます。イタリア語にオレは戻しますよ」

「ツナ君なの?」なんて言われたくはないし、昔はもう会うこともないでしょうって言ったのに。世間は、町内は狭い。
更に今日は運もよろしくないようだ。オレ達が座る隣の席に注目を終えた彼女達が座った。空いてないのが悪いといえば悪いが。

「あ、雲雀さん」
「それに前に会った…」

どうして気付く。どうして話し掛ける。
頭を抱えたくなる。しかしオレはトンノルだ。沢田綱吉ではないと暗示をかける。かけたい。

「buonasera」

にっこりと笑うオレは引き攣っていませんか。いませんよね。ウソツキ舐めてちゃあいけない。
こんにちはと日本語で返す彼女達は何も変わらない。穏やかで、何一つ。
向かいの雲雀さんは何やらオレを見て笑いたそうな顔しくさってる。くっそ。とりあえず落ち着こうかと少し冷えた紅茶に口をつけた。

「そうだ。君達、聞いたかい?」

珍しい。雲雀さんが彼女達に話を振るなんて。
すうっとオレより優雅に紅茶に口をつける彼は、見る人が見れば卒倒しそうだ。だが人の悪そうな笑みを浮かべてなければ、だ。

「何をですか?」
「それはもちろん…」

にんまり。ぴったりな効果音だろう。
疑問を表にする二人に反してオレは顔が引き攣るのがわかった。今度は確実に、引き攣った。

「沢田綱吉のことだよ」



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