一見すれば普通に授業が進んでいって、普通に休み時間を過ごす。まあ、オレに向けられる視線は冷たいのだけれど。
オレが嵌めたというか、嵌められた女の子が何を言おうが獄寺君と山本がいつもいるから何か言われることもなくなった。一人でいれば暴言と暴力が霰の如く降ってきたことが続いたから、クラスメートの二人がオレにべったりとなっている。オレへの仕打ちはクラスメートだけじゃないし、学年とか関係なかったや。流石に一年はなかったかな。しかし申し訳ない。
二人がオレの近くに居れば何事もない。山本も獄寺君も腕っ節は強いし、獄寺君なんかは要点要点を絶妙に攻めるからめちゃくちゃ口も強い。情報処理が得意らしい。意外にも山本も口喧嘩が強くて、自覚あるのかないのか、さらっと爆弾落とすような発言もするからかあまり言ってくる人はいない。
二人がいなくともお兄さんがどこからか現れてくれたり、やばいと思ったタイミングで雲雀さんから呼び出しくらったりとなんともオレは救われてる。時折オレに突っ掛かってくる人達が何故だか怯えた様子で立ち去っていくこともあるから、クロームか骸が絡んでる時もあるんじゃないかな。多分だけど。本気でありがたい。

「ありがたいと思ってるなら今日起きることは黙って見てなよ」
「だったら、何が起きるかくらい教えてくださいよ」
「だめ」

だと思ったけどさ。これ以上言うのも怖いしで、小さくため息だけをついた。鼻で笑われるだけならかまわんさ。
昼休み二人に応接室前に待機してもらい、単身で聞こうと思ったんだ。結果は玉砕だけど。まあ獄寺君が教えてくれないあたり、無理だろうとは思ってたよ。

「ま、放送かけるから大人しくしときなよ」
「なんか大事になってません?」
「気のせいだろ。僕の敷地内で風紀を乱せばそうなるんだから」
「…はあ」

気のない返事。収穫はあったけど。やっぱ怒らせたくはないな。

「用が済んだら戻んなよ。番犬がついてれば君も平気だろ」
「番犬って。番犬じゃないですけど、平気です。二人がいれば」
「じゃあさっさと行きな」

こうまで言われれば戻らない方が機嫌が悪くなりそうだ。しょうがない。
じゃあまた。そう声をかけて二人の元に戻った。笑顔で迎えてくれる彼らは本当、なんとも言い表せないや。



帰りのSHの時間、本当に放送がかけられた。雲雀さんの声で体育館に集まれ、と。当然逆らう程に自分の身を危険にさらしたい奴なんていないから、素直に体育館に向かう。全校生徒に向けて、加えて獄寺君と山本を見ればしたり顔のような表情。なんとなく予測はついた。それでもこうなったら止める術はオレ、持っちゃいない。
大人しく体育館に向かえば紛れるようにしていながら、その生徒達の流れから引き離された。

「どしたの?」
「十代目はこっちです」

なんで、と言いたい口はそのまま開くことになった。

「ボス、大丈夫?」
「クローム!大丈夫だけど、どうして並中に?」
「呼ばれたから」

簡潔だなあ、いつもながら。
連れて行かれたのは体育館の裏口みたいな出入口。クロームはそこにでちょこんと座ってて、中に入ればお兄さんもいて。ランボを除いて全員集合だよこれ。

「なにするの…」

予測はついても方法はわからない。不安そうな表情をしてたらしいオレ。大丈夫と山本に背中を押され、獄寺君にもうすぐだと微笑まれ。

「極限に安心していいぞ!」
「は、はあ…?」

無理だと思っても皆笑ってるし。この際もう全部任せて、オレは考えることをやめて流れに身を任せることにした。この五人を止めろなんて無茶も無茶だ。
舞台袖までくれば生徒達のざわざわ感がより大きく聞こえた。なんで連れてこられたか、なんてわかるわけないから当たり前と言えば当たり前。

「全員入ったみたいだな」
「そーみたいっスね」
「しかしうっせえな」
「口塞ぐ?」
「しなくていいのな」

どうせするから。そう告げられた言葉通り舞台の端っこに見つけた、する人。不機嫌を隠そうなんてこれっぽっちもしない人。

「君達黙れないの?」

マイクなんて通していないのに響く声。おそらく、なんなら僕が黙らしてあげるよ。なんて言いそうな口調。
たった一言なのにしんと、水を打ったかのようだ。恐怖が降り立ったみたい。

「できるじゃないか。今からちょっとした物を見てもらうよ」

その言葉が合図かのように、風紀委員達が一斉に動いた。電気が消えて舞台の壁にスクリーンのような布がおろされる。生徒の方から何かがぶわっと光ったかと思えば、ノーパソと映写機だろう物が中央にあるのが見えた。光はそこからだ。

「僕のテリトリーの中で起きたことを簡潔にまとめたものだ」



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