どうしてこうなった。オレは本当のことを言っただけなのに。嘘つきは向こうなのに、オレが嘘つき扱い。
今はまだ家で知ってるのはリボーンくらいだからいい。リボーンだってオレを信じてくれなかったけど、それでもまだいい。変わるオレの様子は気づいていても、何があったかなんてのは他の皆はまだ知らないから。

「どうして…」

何度も呟いた。仲間と信じた彼らに向かって何度も何度も。でも信じてはくれなくて、オレの扱いがひどくなるだけだった。
本気ともとれる冗談の嫌がらせ、そんなのリボーンからは日常茶飯事だった。少し前は。今は本気にしかとれない嫌がらせ。そんなことに嫌気がさして飛び出した。母さん達にはばれないように。
飛び出したところで行くあては揃いも揃ってオレを敵のように見なす。故に行くあてなんてない。仕方ないから夜の公園に一人、ブランコなんかに座ってる。
月明かりと街灯があんなにも寂しく見えるなんて思ってもみなかった。頼れる人のいない心細さがより強くなりそう。

「なーにやってんだ」

だからそんな明かりも直視できなくて、俯いていたら聞き覚えのある声。また災難かと思って身体をびくりと震わせた。

「一人で、こんなところでよ」

ぽつぽつと紡がれる言葉と、ざっざっとした砂を踏み近付く足音。逃げ出したくて、逃げ出したくて。でも動くことが出来ない。ブランコの鎖を握る手が強くなる。

「ん?どした?」

俯いた目線の先にスーツと思われるスラックスに、磨かれた革靴が。でかい。
じっと身体を強張らせていたら頭になにかが触れた。温かく大きなそれ。それが掌だと頭が理解するのには数十秒程時間を必要とした。

「何か言えよ、ツナ」

顔を上げれば聞き覚えがあって当たり前。スーツ姿に似合わない程、豪快に笑うこの男。

「とう、さん…」

イタリアにいるんじゃないの。なんでここに。
何か言いたくても言えなくて、開いた口は塞ぐことすら出来ずに。あんぐりと見上げる他、何もできなかった。

「なんかリボーンから来たやつ読んだら様子がおかしくてな。気になったから来たんだ。九代目と俺以外知らん、極秘だぞ」

聞きたいことをあっさりと告げた。
様子がおかしい、か。うん。おかしいなんて可愛い言葉で片付けられる程、オレは大人でもないし器も懐も大きくない。

「息子が気にならねえ親なんざいない。何があった」

妙に真剣な顔つき。腰を落としてオレと目線を合わせる。捉えられたら反らせない目線。なんだか久しぶりな感じ。こんなにも強い意志で真っ直ぐ見られるのなんていつぶりだろう。
頭の片隅でそんな事を思っていたのに、オレのズボンには小さな染みができて。濡れた、という感覚と共にどっと押し寄せる涙。

「とぉさっ、ひっ、うぐ…いっぐ…」

少し驚いたようだがそれでも穏やかな笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。それだけのこと。なのに堪えようとした涙は押し切るようにして、拭っても拭っても止めどなく溢れていった。

「ゆっくりでいい。泣きたきゃ泣きゃあいい」

人を頼るという感覚はこんな感覚だったんだ。



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