女の叫び声が一番煩い。まるでマーモンと骸が戦った時みたいだ。幻術のかけ合いじゃなくて一方的だけど。目を開けたらオレもかかりそう。嫌だ。

「手厳しいね」
「なんのことです?」
「赤崎華乃、精神的にそろそろやばいよ」
「そうですか。いいんじゃない」

三倍返しって言ったし。三倍返しの範囲だろ。てか雲雀さん見てんの。よく平気だよね。
断末魔のような叫び声が途切れた。終わったのかな。

「これ以上したら死にますよ、彼女」
「死んじゃだめだ。彼らはまだ元気だね」
「元気ではないでしょ」

意識があるだけ元気じゃないの。床とご対面しててもさ。喋る気力はないみたいだけど。
あのリボーンもぐったりしてアウトとは。びっくりだね。

「痙攣してるー」
「アンタがそこまでしろって言ったんでしょ」
「そりゃ、オレの家族に手ぇ出した報いだ」

殺すわけにはいかない。人殺しになりたくはないし。オレは正当防衛だけどね。
そんな彼は事は終わったと、角にいるオレ達へと足を運んだ。

「げほっ…」
「ん?」
「テメー…こんなことして…タダで済むと…思うな、よ…」
「ワォ。さすが赤ん坊」

凄いね。喋れるんだ。でもさ、説得力なさすぎ。
自分も床に倒れて、他の守護者も床に対面してぜえぜえと呻き声がやっとだ。ボスとなろうとする女の子、赤崎さんは一番ひどい。仰向けで泡ふいて痙攣して。目も当てられない状況だね。リボーンが一番マシか。

「タダで済むさ。オレは一般人だし、骸がやったっていう証拠はないだろ」
「僕らは一切手は出してませんからね」

何かは出した。見せた。でも一切、指一本触れちゃあいない。

「喧嘩売ってくるならオレとこの二人に売って来いって言っといてよ」
「今日は何もしなくていいって言ったくせに」
「今日は、ですよ。次からは群れてんの咬み殺せますよ」
「しょうがないね」

群れてんの嫌いだもんなあ。オレも面倒なんだけど。でもしょうがないから売ってきたら買いますよ。押し付けるけど。

「ただ、彼女は許さないよ」

苛々が収まってるわけじゃない。リボーン達はさすがに母さん達に手を出しはしなかったからいいとしても、だ。
やめとこうと思ってた。でもやっぱり直接仕返ししたいじゃない。主犯には。
痙攣して倒れてる彼女に近づいて横っ腹に蹴りを。割と強かったそれは彼女の体を浮かせて、壁へとぶつかった。少しは晴らせたかな。

「テメッ…!」
「手出したじゃない」
「出さないとか言ってたのに。非情ですよね、綱吉君は」
「やっぱ耐えられなかったの。家族大好きっ子の家族に手を出す方が悪いんだよ」

無傷だったしこれで勘弁してやるよ。オレの優しさ、恩にきろよ。
骸と雲雀さんのいる戸の前まで来て、オレもやることは終わったと笑って。

「じゃー、帰りますか」
「放置?」
「放置ですよ。次第に彼らは意識がはっきりするでしょうし、そしたら女を連れて行きますよ」
「そそ。後片付けとか面倒。お疲れ様って労っちゃるから、帰るよ」

後は勝手にすればいい。オレの知ったこっちゃない。
ぷらぷらともう薄暗くなった部屋を後にした。まだ呻き声はしていたけど、タフな彼らなら一時間もそうしてれば大丈夫だろ

「大事なもん守れたらオレはもういいや」
「僕らはその中に入ってるんですか」
「大事なげぼ、手足だよ」
「今下僕って言おうとしませんでした!?」
「手足っていうのもオブラートに包んだだけだろ」
「ばれたか」

学校を出ても薄暗く、辺りは電灯がつき始めていた。帰ろう帰ろう。待ってる人がいるんだ。
オレを大事にしてくれる人はオレの大事なもんなんだよ。



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