おかしい。ツナが帰って来ない。毎日いち早く帰宅して、自分の部屋に篭るあいつが。なにかあったか、そう思っていればチャイムが鳴った。

「ごめんねー、ツッ君まだ帰って来てないの」

リビングでエスプレッソを飲みながら聞いていれば、どうやら獄寺達らしい。上がって待ってて。とママンが言うからリビングまで上がって来た。

「ゆっくりしてってねー。リボーン君、私買い物行ってくるわ」
「わかったぞ」
「お留守番よろしくね」

こくんと一つ頷けば、ママンはいつも通り買い物に出掛けて行った。
いままでなら本人不在でも勝手にツナの部屋に上がっていたが、今はそういうわけにはいかない。今のあいつにとって部屋はテリトリーで、そこに踏み入れられるのはかなり嫌がる。極力接触を避けられる俺はもちろん、アホ牛やイーピンでさえも「入っちゃ駄目だよ」と諭してるのを聞いた。

「久しぶりだな、家に来るのは。了平までいるじゃねえか。どうした」

当然避けられているのは俺だけでなく、今ここにいる獄寺や山本、了平もだが。了平は学年が違うから顔を合わすことがほぼないとは聞いた。

「沢田さんが雲雀の奴に…」
「拉致られたのな」
「雲雀に…そうか…」

考えれば雲雀はあの件には関わりはしてない。俺の言ったことも一切耳を傾けはしなかった。

「何もないとは思うが、極限にどうするのだ?」
「大丈夫だろ。雲雀だしな」
「しかしリボーンさん!」
「あいつを俺達と一緒にすんな。奴は何もしちゃいねえんだ。それに力の使えないツナをどうこうする奴でもない」

奴は奴なりにツナを気にかけてた。いい加減にしときなよ、奴はそれだけ言った。もしかしたらわかっていたのかもしれない。雲雀にはこうなることが。
ソファに座った俺達の間に沈黙が続く。重く、ただ一人を想う沈黙。

「罰だな」
「罰?」
「なんのことですか?」
「ツナにあんな仕打ちをした俺達の罰だ」

結果ツナを壊してしまった俺達への。

「……そうかもしれん」
「お前らはアイツから離れる気はないだろ」
「当然なのな!」
「極限にな!」
「一生かけて償いますよ!」

そう、一生をかけて。大きな罪だ。一人の人格を壊す程、記憶を消す程に追い込んだのだから。

「例えオレ達のことをずっと思い出さなくても、嫌われても、オレ達はそれ程のことをあの方にしました」
「だからこそ、余計に償わねばならん。日陰でもいい。できることは極限にやらんとならんのだ」
「その為ならオレは何を捨てもかまわないのな」

それでも許すことはなくて、俺達の自己満足かもしれない。でも、だ。人を全く信用しなくなったあいつに、人を信用させてやりたいというエゴすらもいけないことだろうか。それだけは償いとして、陰ながらでもやらせて欲しい。

「許す許さないじゃないのかもな。ただのエゴかもしれん。それでもやらなくちゃいけねーんだ」

悪かったと、そう詫びることすらできない状況にしたのは俺。詫びて済まされる問題じゃないことは重々承知している。だけども罪悪感に押し潰されても、謝罪しなければならないことだとはわかってるんだ。ここにいる奴らは皆。
エスプレッソを啜った音がやけに虚しかった。



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