先に獄寺君がダイナマイトを投げて来た。短気だからなあ。殺す気かよ。
放物線を綺麗に描いてオレに向かって来る。前よりコントロールは上手くなったとはいえ、やっぱり投げる物だもん。手を離れれば不安定。そして安直、だ。きちんと狙って蹴ってやればそれは持ち主の元へと戻ることも出来るんだ。

「!」

終わりかな、なんて思っても頭の回転の早い彼だ。小さな爆弾を投げて早く爆発し、致命傷となる爆発は回避したか。

「よそ見してていいのかよっ!」
「よそ見?してるわけないだろ」

全体を見ることくらい出来なきゃどうする、山本君よ。時雨金時を受け止めてやれば意外そうな顔をされた。できないでか。何度お前の太刀を見てると思ってんだよ。
刀を受け止める力はそこそこに雲雀さんの時とおなじく蹴り飛ばしてやった。さすがに野球部。軽くないけど、オレもできなくはない。

「うぉおお!」

そこに体制を立て直した獄寺君が突っ込んできた。頭に血がのぼってます、って顔してる。残念だ。

「そんなんじゃオレを倒せねーって」

ただ殴りに来るだけじゃ駄目だって。力の向く方向を変えてやれば、ほら。体制は崩れる。

「鈍ったもんだね」
「くっ、そが…!」

そこからでも裏拳で反撃する姿勢は素晴らしいけど、走って向かってくる彼の前には終わらさなきゃね。

「しばらくじっとしててよ」

片手で拳は受けとめて、足ばらいをして首にチョップ。もとい手刀を落とした。

「がっは!」

そのまま倒れ込む彼とは反対に切りかかってくるもう一人。素早くその場から離れて避けた。つもりだった。

「さぁっすが。やるじゃん」

頬が切れた。避け切れなかった。二人とも鈍ってると思ってたのになあ。

「頭冴えたわ。そーいやお前強いんだよな」
「はっ、なに言ってんの?」

にやりと笑ってオレが突っ込んで行けば山本はまた構えて。突っ込めばやっぱり大きくオレに向けて刃を下ろす。予測はできてた。だからそれを足を回すようにして弾いて、怯んだところで顔面。というか顎に横から入れた。

「うぁっ、あぐ…」
「立てないっしょ。軽く脳震盪起こしてるはずだよ」

ふふんと笑えば悔しそうに呻いていた。さて、本題はここからだ。

「そろそろ出て来なよ。赤崎さん?」

開いている戸の方にそう投げかければ人が動く気配が強くなった。

「なんならオレから行こうか?」

ため息一つついて足を踏み出せば怖ず怖ずと彼女は現れた。最初っからそうしろよな。

「ツナ、君…」
「やあ、お姫様。オレの場所を奪って陥れて、周りを騙してるのは楽しかったかい?」
「なんのことっ」

白々しい。今更まだ貫き通すの。

「オレがやられてる時の醜い顔、また見せてくれてもいいじゃん」
「馬鹿なこと言わないで!私がいつそんな…」

あらまあ。いつになく逃げ腰だね。自分を護ってくれる人がいなくなったからか。

「いつ?オレを見る時の顔はたいがいそんな顔だったじゃんか。それからさ、どうよ。騙して手に入れたボンゴレ十代目の座は?」
「騙してはいないわ。それでもボンゴレ十代目の座は私にこそ相応しいのよ」
「寝言は寝てから言うもんだぜ?大空属性より霧属性のが強いクセに」
「どうして、それ…」

ほらビンゴ。知ってたけどね。
わけのわからん戯言を言われてからオレが何もしていない、なんて思ってたの。オレはね、ことなかれ主義だけどやられたらやり返す主義なんだよ。

「調べさせてもらったんだ。君のことイロイロ。叩けば埃はいーっぱい出て来たよ」
「な、にを…」

ありありと浮かべた恐怖。隠すなら上手いこと隠さなきゃ。下手なんだよ。

「最近君の近くで消えたファミリーの人がいたはずだよ」
「だからどうしたのよ」
「その人がさ、言ってた。てか証拠写真と共にね。君はドンの側近である父親と一緒にファミリー内のお金を横領したり、自分とこの情報を他のマフィアに売ったんだってね」
「それがどうしたの!?下っ端の金なんて関係ないわ。情報流したってまだうちのファミリーは潰れちゃいないわ」

言い切ったな。捕ったって、流したって。認めたな。

「他にもあったけど。それらは全部ルール違反だよ」
「警察にでも言うつもりなの?無駄よ、そんなの」
「まさか」

表には出しはしないよ。裏の、出るとこ出たけどさ。

「オレさ、とある最高責任者と知り合いなんだ。だから全て言っちゃった」
「なんの責任者、よ…」

ゾクゾクとした寒気。連絡したのさっきなのにお早い到着だ。

「ツナ君…?」
「気安く呼ぶなよ、虫酸が走る。大丈夫。一人じゃない。一般人であるオレに手を挙げた彼らも一緒だから安心して」

そこで寝てる獄寺君も、まだ動けない山本も。一緒だから。多分父親も一緒だからさ。

「罪人ハコノ者達カ」

にっこり笑ってオレはそうだと頷いた。



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