昨日、ボンゴレから正式に除籍された。

「まだ来るのかよ」

正式に死炎印のついたものつきで。父親はどうであれ、オレは一般人へと戻ったんだ。やったね。ただ一つ戻れてないのはオレがイジメラレテナイという状況だけ。
だから学校にいけばそういうことも言われるし、机も机の中もボロボロである。税金なんだぞこれ全部。

「目障りなんだけど」

どっちがだ。

「まじ消えねーかな」

うるせえな。お前が消えろよ。
たかたがオレの中で名前すら危うい人達にいくら言われても構いはしないけどさ。痛い程睨みつけてくる元お仲間さんよりはマシだし。
昼休みなんかの長い休み時間、オレはリンチの的だった。手は出さないし、やられ放題。基本男子にやられるが女子もくすくす笑ってるし。胸糞悪いったらない。

「テメーなんか来なけりゃいいんだよ!」

一般生徒が席を立とうとするオレを殴ってくる。それをまともに受けて倒れる。でも、それは昨日まで。
ぱしんと音がして手でそれを受け止めた。なんかありえねえし、みたいな顔してるけど。オレの内心ですけど。

「な、おま…」
「ブッサイクな顔してんなあ、アンタ」

鼻で笑ってグーパン握ったままもう片方の空いた手で重心落としてしっかり鳩尾に入れてやる。カエルの潰れたような声を出して、そのまま彼は横に倒れた。机で頭打ったな、ありゃ。知らんけど。

「ダメツナが…」
「反撃した…?」

だって一般人だもん。マフィアじゃないんだもの。今までちゃんと手を出してなかったオレを褒めて。オレ偉い。

「マグレじゃねーのかよ!」
「マグレかどうか、試してみれば?ほんとはいつも通りのダメツナかもね」

なんて煽ってみれば赤信号を皆で渡れば怖くない精神か、一斉にかかってきやがった。いいね、手前が省ける。女子の声援を受けたヒーローの男子達。まさにオレがヒール。
罵声や雄叫びを上げながら向かってくるのはどっちがヒールかわからない。ここに元お仲間さんがいないのが残念だな。昼休みさっさと屋上かどっか行きやがった。ま、いいや。

「相手してやるよ」

にっこり笑ってオレも構えた。



十分もすれば教室は静まり返っていた。当然だ。テレビの特撮物と違ってヒーロー、つまりオレにかかってきた男子陣はヒール、オレに潰されたんだから。声援を送っていた女子も青ざめていた。

「ワォ。草食動物の本性かい?」

顔を上げてドアを見れば女子達の間を掻き分けて入って来た雲雀さんが見えた。あれかな。女子が歓声じゃなくて悲鳴を上げたからかな。

「本性、ね。そうかもしれません」

クスリと笑えば雲雀さんもニィと口の端を釣り上げた。周りは恐怖に満ちている。うずくまっていた男子も転がってた奴を引きずって教室の前と後ろにパックリと分かれた。

「沢田綱吉。風紀を乱し過ぎだよ」

それだけ言えば雲雀さんはオレに突っ込んできて。手にはトンファー。オレもグローブを素早く装着して受け止めた。

「オレが乱したんじゃなくて周りが乱してるんです、よっ」

弾き返して顔面に入れようとすればオレの拳も止められた。空いてる方で腹に入れようとするから咄嗟にそれより早くと足が出て横っ腹に。しかし切り替えて止められて。流石に戦闘狂。転がしてやった奴らとは違う。
互いに離れて体制を立て直し、すぐさまオレは拳を。雲雀さんはトンファーを繰り出した。でもただの拳と思うなよ。

「なっ」

ヒビの一つくらい入れてやるよ。
驚いて一瞬のスキが彼にできた。そのスキを見逃す程オレは優しくも、ましてや手慣れてないわけでもない。
軸足となる足に力を込めて、片方の足に体重を乗せて思いっきり蹴りを入れた。咄嗟に蹴りが来ると理解は出来たらしいけど遅い。身体がついていけてない。
大きな音がして雲雀さんは後ろのロッカーにぶち当たった。頭がへりに当たったはずだよ、超ってか激痛そう。

「まだします?」

それでも聞いてみた。あの雲雀さんが簡単に潰せると思っちゃいない。

「ゲホッ…」

周りは言葉も出ないらしい。それでも手に取るように思うことくらいわかる。ダメツナが雲雀さんをぶっ飛ばした、そんなとこだろ。

「しない、なんて言うわけ、ない、だろ」

さすが。ボンゴレ十代目の守護者一の戦闘狂だ。よろけながらも立ち上がった。その辺の奴らとは格も出来も違う。

「じゃあ第二ラウンドといきますか」

その言葉と同時に互いに構えて突っ込んだ。



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