「ツナ君がぁっ…」
朝、軽く涙目になりながら赤く腫らした頬を撫でやってきた。腕も同じく赤い。オレが何した。
「ダメツナがどうしたんだよ!?」
「大丈夫か?」
おいおい。席の周りに群がる男子ども。ダメツナはなんにもできないよ。
最近彼女、赤崎さんがオレを好きではないらしく、というかオレが彼女を好きではないと認識されているらしく何かと冷遇されている。それは彼女の言葉からだけど。オレ自身、好きとか嫌いじゃなくてどうでもいいんだけど。
しかしこうまで直接的なのは初めてだ。
「昨日ね、私が放課後歩いてたらお前なんか嫌いだって直接言われて…」
オレそんなこと言わない。
「ツナ…?」
「オレなんにもしてない知らない!」
「本当、ですか?」
「獄寺君!山本!」
信じてくれないの?なんて言えばちらりと彼女に目をやった。ちょっと待ってよ。ぽっと出の転校生を信じちゃうの。
「ダメツナ!テメェ!」
「なに泣かせてんだよ!」
わらわらとオレの席に集まる先程の男子ども。やめてくれよ。オレが女の子泣かすなんてできないことわかるでしょうよ。
「そんなことしてない!」「じゃあなんで泣いてんだよ!」
知るか。オレが聞きたい。
二人を見れば疑惑の目。なんで。信じてくれないの。確かに冷遇はされてたけど、二人もなの。
「………ねぇ、何時頃?」
ぎゃんぎゃんと吠えられる中、一人の女子、京子ちゃんが赤崎さんに歩み寄り尋ねた。
「えっと、五時半頃…」
「本当?」
「え、えぇ」
女子が騒ぎ出した。京子ちゃんも黒川と目を合わせてる。五時半頃って、オレは確か。
「それはおかしいわよ」
ばっさりと黒川が切り捨てた。何がだよ、と首を傾げる男子連中に、そもそも無理だと更に続けた。
「だって京子とあたしともう一人女の子と、スーパーで会って話をしてんだよ。無理じゃない」
「他にもいたわよ?」
ねぇ、と京子ちゃんが周りを見ればまばらに女子の何人かが頷いた。そういえばいたかなあ、なんてオレは記憶の糸を辿ってみる。
「すごい背の高い格好いい人とかわいい女の子といたよね」
「そうそう。イケメンといたもん!」
「あの時間にあんな人がいるなんて珍しいからねー」
「見ちゃうよね!」
口々に彼女達は言い合う。確かに奴は顔だけ見てればイケメンの部類だろう。笑い方は特殊だけど。クロームはかわいらしいし。
「十代目?」
「あ、うん、確かに昨日はオレ、スーパー行ったよ。骸とクローム連れて」
「なにしにだよ?」
「タイムサービス目当てで」
はあ?と周りの人や赤崎は疑問を浮かべる。わからなくはないけれど。
「あー…昨日は人気スイーツの特売があってさ、お一人様二つなわけ。三種類あって、一人だと二つじゃん。三つとも食べたいから二人呼んで行ったんだ、けど…」
わかると頷く女子に呆れる男子。いいじゃんオレがスイーツ男子なる輩でも。甘い物好きなんだもん。
「じゃ、じゃあその後よ!」
少し立場が悪くなった彼女は少し声を上擦りながら、そう叫んだ。まだ言うか。