「ツナ、ボンゴレリングはどうした」
それからすぐの三日後。
そろそろ寝るかと部屋に戻るとリボーンが気づいた。遅い。
「あー…うん、ね」
「もう一回言うぞ。ボンゴレリングはどうした」
うわ怖い。目が座ってるよ赤ちゃんのくせにこんな目してたら駄目じゃん。
「……あげちゃった」
言っちゃった。ハートが付きそうな勢いで言っちゃった。気付くなよばか。
「はあ?」
「た、タンマタンマ!ちょい待った!」
銃向けんなよ!ダメツナは避けれないんだぞ!
「誰に、いつ!あのボンゴレリングをあげただと?」
「えー…っとですね。転校生の名前なんだっけな、なんとかさんに三日前くらいにあげた」
「テメェという奴は…!」
ぎゃあ!撃ちやがった!間一髪で避けるけども。睨むなよ。だって死闘をして手に入れようが物騒極まりないことにかわりはないんだ。あの指輪は。
「物騒極まりなくてもな!ボンゴレにとって大事なもんにかわりはねぇんだ!」
忘れてたよ。読心術使えんだコイツ。
「知ってるよ!けどオレはマフィアなんかになりたくないんだ!代わりなってくれる人が、意欲的になるならいいじゃんか!」
「取り返して来い!」
「嫌だ」
どうするこれ。超険悪。今までに、つか見たことないくらい睨んでるよリボーンが。感情剥き出しにしてさ。
「そんなに大事ならお前が、父さんやボンゴレが取り戻せ!」
「ツナ!お前が」
「知らない!オレはもう寝る!」
リボーンはまだ何か言いたげな顔してたけど、オレは打ち切ってもそもそと電気を消して布団に入ってやった。想定内だし。
翌朝も険悪ムード全開だったけど無視してやった。知るか。
朝ご飯食べて部屋で着替えてたら獄寺君が来たようだ。リボーンが降りていった。多分言いに行ったんだろうな。どんな顔するかな獄寺君は。
素知らぬ顔しておはようって言ってみれば、重苦しいおはようございますが返ってきた。ビンゴ。
登校中、いつもは話かけてくるのに重々しい空気だけが流れていた。耐えれるけど可哀相になってくるね。
「獄寺君、リボーンから聞いたんでしょ」
仕方ないから言ってやれば、今にも泣き出しそうな顔してる。
「どうしてっスか!」
「オレは前から言ってたでしょ。なりたくないんだマフィアに」
「だけど10代目は!」
「もう10代目じゃないよ。一般人の沢田綱吉。獄寺君や山本は好きだよ。友達としてね。部下だなんて考えられない」
半分本心半分嘘。友達として好きなのは本当。部下として考えられないのも本当。嘘は好きの裏側に見えるもの。子どもの頃から危ない目にあってたオレの平穏を壊すのは嫌いなんだよ。誰であっても。
そりゃ軽い非日常程度ならいいけど、リボーン達が絡むと非日常じゃなくなるじゃん。それは嫌い。命のやり取りとかそれに近いものなんて、今のオレには御免被りたい。
「さわ、ださん…」
「そう。沢田。ツナでも良いけど」
「……オレは、あなただからこそついて行こうと思ったんです」
「けどオレはマフィアになりたくない。父親はああでも、普通の一般的な人生を送りたいんだ」
無理なんてわかってても。それでも可能性を捨てたくない。
「………」
「苦しいよね、わかってるごめんね」
そんな顔しないで。振り回してごめんね。けどボンゴレ10代目の右腕になりたかったら彼女の側にいた方がなれるよ。その言葉は口に出来なかった。泣きそうだけど苦虫噛み潰した顔してるんだもん。
そっから黙って学校に登校した。
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