ぱたんと扉を閉めれば肩の荷が下りたように楽になった。失敗する可能性は僅かだけどあったからかな。成功で終わって良かった本当。
終わったね、なんてザンザスと元来た道を戻ろうとすれば、先程邪魔した彼によく似た彼女が端で足を抱えるようにちょこんと座っていた。

「クローム?」
「!」

何しているのかと思い声をかければびっくりしたように顔を上げて。彼女は少女から女性になろうとする時期。少しまだあどけなさが残ってる。しかしそんなに驚かすつもりはなかったのに。

「ボス…!」

まだ君はオレをそう呼ぶのか。もうオレはボスではないというのに。

「もう君のボスじゃないよ」
「ううん。私のボスは貴方だけだから」

駆け寄ってきて純粋な目で見られてはオレも言い返せないじゃないか。まったくこの子も変わらないんだから。

「俺は先に行ってるぞ」
「あ、ごめん。わかった」

そう言えばザンザスはさっさと戻っていった。もう終盤を迎えた戦闘に向かって消えた。

「あの、ボス」
「ん?」

怖ず怖ずと目を伏し目がちにしてオレを呼ぶ彼女は可愛らしく思う。実際可愛いと思うしね。

「ごめんなさい!」
「へ?」
「あの時、ボスの現状を知ってたのに私骸様達にそう簡単にへこたれるような人じゃないって、手を出すなって言われて、何もしなかった。そしたらボスがいなくなって、あの人がボスになって、それで…」

泣きそうな顔して謝らないでよ。お前が悪いんじゃないよ。作り出した元凶ももういないけど、ドン・ボンゴレになりたくなかったオレが便乗したのもあるんだから。

「大丈夫だよ。オレはクロームを責めないし、悪いとも思ってないから。だから泣かないで。クロームはオレがしてないって思ってたの?」

今にも涙を零しそうな彼女に制止をかけて尋ねれば大きく頷いた。仲間を信じるとか、昔よりは理解出来てるしオレもヴァリアーの面々を信じてるつもりだから、今ならそれは嬉しく思えるね。昔なら理解できずにありがとうだっただろうし。

「ありがとう」

だから今は心からのありがとう、を。
ふわりと笑ってみればようやくクロームも笑ってくれて。泣き顔よりやっぱ女の子は笑ってる方がいいようん。

「ところでクローム達はどうするの?」
「それは、まだ…」

わからないってか。中立というか当時から立場がわからなかった彼らはオレの仕返しの範囲外。元は他の彼も範囲外だったんだけどあんなに色々と言われちゃあ、ね。オレも黙っていられないよ。けどクロームは悪くはなくとも謝ってくれた。それだけでオレは十分。だからイタリアに残るなら残ればいい。
ボンゴレが壊滅して、犬や千種が何をするとか骸がどう指示を出すなんてわからない。とりあえずはイタリアにいるんだろうけど、彼女にからすれば不安と言うか先が見えなさ過ぎるよね。

「そっか。ザンザスが新ボンゴレを作る時に入るなら入ってみたらどう?」

入れるかは知らんけどな。何せ骸の一味だからな。

「ボスは?」
「オレは入んないよ。オレ気ままに情報屋してっから」

名刺なんてものはないけども、ヴァリアー贔屓で名前を変えてやっていると言えば少し驚いた顔をされた。フランから骸に伝わってるならクロームも知ってると思ってたのに。

「…皆と相談して決めてみる」
「うん。ヴァリアー幹部に聞けばオレの居場所わかるから、迷ったらおいで」

最悪超直感様に尋ねることが出来るんだ。やっぱ反則技だよね。
彼女は親父が巻き込んでしまったんだ。オレはまだそれを返せてないから、返さなきゃ。

「ありがとう」
「どういたしまして。そろそろオレも行くよ。またね」
「またね、ボス」

軽く手を振ってザンザスが行った方へと向かった。進めば進むほど血とか硝煙の臭いがきつくなってる。暴れてんなあ。
そんな穏やかとは掛け離れた場所でオレは穏やかな再会を果たした。













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クローム出せた!
心残りはバパン出せなかったこと。

 

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