あれよあれよという間に一ヶ月が過ぎた。転校生は派手目な子から京子ちゃんみたいな大人しい子達まで、クラスの子達皆と仲良くなっていった。容姿もわりと良い方で男子からも人気がある、らしい。知らないけど。オレも表明上は仲良くしてるし。
二週間経ったくらいに私も実家がマフィアなの、一緒だね。なんて言われたくらい。そうだねって返したけどオレの実家は一般家庭だって思ってた。一緒にすんなよ。
「沢田君、ちょっといいですか?」
はいきた。オレ帰ろうとしてたのに。山本部活だし、獄寺君帰っちゃったし。それになんだこの感じ。いかにもお家関係の時の雰囲気。語尾がですます調の時はお家関係なんだよこの子!
「えっ、うんいいよ」
いやです。早く帰りてぇんだなんてダメツナは言いません。言えません。せっかく積み上げてきたダメツナイメージ潰す勇気はオレにはないです。
ちょっと来てと呼ばれ連れてこられたは空き教室。なにこれ告白ですか。
「あのね、沢田君…」
重苦しい雰囲気だなあ。帰りたいってば。微塵もみせないけど。
「どうしたの?」
「私に、ボンゴレをくれないかな」
ん、なんつった。今なんて言った。空耳聞いたような気がしたんだけど。
「も、もう一回言って?」
「だからその、私にボンゴレをくれませんか、って…」
おいおいおい。この娘正気か。ボンゴレくれって言ったよな。
目はマジって言ってるよ。本気と書いてマジなあれだよ。じゃあオレの答えは決まってる。
「じゃあ…はいこれ」
首にぶら下げてた物を渡してみた。欲しいんでしょ。あげる。
結局ことなかれ主義だけども我が身が一番可愛いのでね。押し付けれるなら押し付けましょうか。
「え、え?これは?」
「ん、大空のボンゴレリング。ボンゴレのボスが持つの」
ボンゴレ欲しいなら調べとけよ。
それよりなんでキョトンとした顔してんの。欲しいって言ったからあげたんじゃん。帰るよオレ。用は済んだならさ。
「あの、もしもし?」
「え!あ、はい!」
「オレ帰ってもいい?母さんから用事言われてたんだ」
用事なんかないけども。オレの用事があるだけで。ゲームという画面との用事が。
「う、うん!ごめんね、ありがとう」
「ううん、気にしないで」
実はオレ一般人だからさ、マフィアになりたくなかったんだなんてのは心で思う。そりゃ言ってもいいけどなにより帰りたい。
また明日ねと言って別れた。家までもう少しの距離になって思い出した。指にはめたら全身気付だらけになるかもって言うの忘れてた。ま、いっか。
早々に帰ってオレはゲームに勤しんだ。
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ボンゴレリング渡しちゃったよ!
綱吉は平凡な自分に戻りたい。
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