「いや、今はトンノルでしたっけ」

なんでここで現れるかな。道を塞ぐようにして骸が立ってるもんだから、ザンザスも雲雀さんも臨戦体制突入してるよ。オレもしてるけど。

「いやぁ、今は沢田綱吉でやってるよ。これが済めばトンノルだけど」
「まったくこんな所に居るとは思ってもいませんでしたよ」
「それ皆言うから」

皆って雲雀さんだけなんだけど。あ、それと草壁さん。

「フランから聞いてもしやと思いましたが、やはり貴方でしたか」
「オレっすねー。てかやっぱりフランが言う師匠はお前だったんだな」

外れてくれてよかったのに。超直感はどこまでいっても超直感なんだね。外さないし。

「そんなことよりだ」
「そうだよ。六道骸、何がしたいの」
「クフフ、戦闘体制に入らなくてもかまいませんよ。今僕に戦う気はありません」

それオレも気になってたんだよ。でも戦う気がないだと。じゃあなんでお前はここにいる。ドンナの付近にいるんだよ。

「ここを通るのでしょう?どうぞ通ってください。僕は手出ししません」
「マジ?なんで?」

あ、やば。ぽろっと口に出ちゃった。腹の探り合いどころか真正直な言葉だよ。

「マジです。僕はボンゴレが潰れ行くのを一番間近で見る、それだけです。君達は好きにクーデターをやれば良い」

そういやフランが言ってたわ。めっちゃ忘れてたけど。
手を出さないのはありがたいね。骸の幻術ってかなりのもんだもん。骸が出てきたらオレが戦わなくちゃならないようになってたから、それだとクーデターはザンザスと雲雀さんに締めてもらうことになる。それはちょっと、嫌じゃん。

「後ろからぐさりとかナシな」
「しませんよ。さぁ、どうぞ」

骸は道の端に避け、どうぞと進行方向へ手を向けた。大丈夫みたい。オレはこくんと二人に頷いて前へ進む。二人も後に続いて歩き出す。

「あ、言い忘れてましたが」

まだ何かあるのかと振り向けば、いつもの独特な笑い方をして、骸はオレへと視線を合わせた。

「知ってましたよ。中学生の君があんな馬鹿げたことなどしていないことなど」

驚いた。ここにもオレがやっていないと理解出来る奴がいたのか。今となってはどうでも良いが、あの当時骸達はどうなのかわからなかったのだけど。

「今の君でもしませんでしょうけど、あの気弱で臆病者な君にそんなことなど出来ないでしょうに」
「気弱で臆病者なダメツナはもういないけどな。いや、元々オレが作った架空の人格だったんだけど」
「それは、本当に?」
「おうよ」

今更嘘などつくわけないだろ。沢田綱吉は行方不明なんだから、嘘つく意味がない。

「クッハ!やはり君は面白い」
「どうも。言わなくて助かったけど、どうして黙ってた?」
「簡単ですよ。君が継がないならボンゴレは滅ぶでしょう?僕らが手を出さずに滅びるなら便乗しない理由はありません」

あくまでもマフィア潰しが目的か。こりゃザンザス達もフランがいるとはいえど、ちょっくら面倒だぞ。

「無駄話してないで早く間抜け面見に行くよ」
「すんません。じゃあね、クローム達によろしく」

間抜け面って言った。多分間抜け面になるだろうけどさ。
しかし女側じゃないというならば、心優しい彼女はあの当時オレのことをどう思っていたのだろうか。久しく見ないその顔だが、また会う機会があるなら聞けばいいかな。
骸と話をしている時も響いていたけど、きゃんきゃんと喚く声が爆音や銃声に紛れて進むにつれて大きくなってきた。完璧目印じゃん。喚く声が漏れる一際大きな扉をオレは躊躇うこともなく笑顔で開けた。



 

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