何度か雲雀さんに来てもらってはいたけども「きっともう大丈夫だし、たまには君が来なよ」と強引に久しぶりの日本に来た。マーモン連れて行こうとすれば、丁度抜けることの出来ない仕事で無理だったけど、直感は大丈夫と言ってたからそのまま単身で。オレだって髪も伸びたし、背も伸びた。顔つきだって昔とは違うから、向こうでもイタリア語話していたらわからないだろうと直感に賭けてみた。ま、何事もないようです。
日本では外にいる時、周りの目にひたすら気をつけてはいたけどね。風紀財閥を除いたボンゴレ関係者になんて出くわしたら危険も危険。オレのような超直感なんて反則技持ってる人間はいなくとも、勘の鋭い奴なんていくらでもいる。
空港まで雲雀さんが迎えに来てくれたけど、風紀財閥内部に着くまでが冷や冷やしてた。ずっとイタリア語喋ってたから横を通る時は見られるし。オレだって日本語喋りてぇっての。

「ここも入口だよ」

そう言って案内されたのは並盛神社の一角。未来にもあったけど、やっぱりそこは同じ雲雀さん。作る場所は一緒だった。
中は広々としていて、セキュリティもだいぶ強化されているんだそうだ。通された先は純和風の畳の部屋。

「あー、やっと日本語に戻せるわー」

座布団の用意をされたところにどさりと腰を下ろした。服のシワなんか知らない。スーツにシワがつくなんて気にしてられない。
その点、雲雀さんは何か言いたそうな顔しながらゆっくりと座布団に座った。上品って言葉がぴったりだね。

「イタリア語喋ってる時と雰囲気変わるもんだね」
「そりゃ顔つきはきりりとしとかないと。仕事用ですし。んで、ダメツナは行方不明なんですいないんです。イタリア人になっとかねぇとだめでしょ?」

事実用件としてはオレは仕事で日本に来てるんだから。仕事内容は平和な日本にまるで似合わない内容であったとしともだ。

「まぁね。で?その仕事は?」
「ああはいはい。これです。もう調整の段階ですけど」

持ってきた鞄からわりかし分厚い書類のファイルを取り出す。USBメモリーじゃないのはウィルスが恐かったり、オレの不注意ことドジした時が怖いから。作るのはパソコンでも、作り上げたらすぐにその文面だったり関わることは削除するって徹底してあるんだよ。

「ふぅん……支部はどうするの」
「それについては一気に落とします。現在本部に続き有力な支部は三ヵ所程度しかないんで、クーデター起こす時にごつんと。支部には幹部も一人いれば十分ですし、他隊員だって舐めてもらっちゃ困りますよ。幹部連中が人間離れしてるだけで優秀なの揃ってるんで」

ボンゴレ内部の人間もいるから数は相当な数になるだろ。まだ増えそうな気がするけど、また割り振っていけばいい。犠牲は最小限にするようにもしてあるから。

「幹部連中が人間離れしてるって認めたら、君も相当離れてるって自分で認めることになるのわかってる?」
「あ!や、オレ普通の人間なんで」
「嘘しかないじゃない」

普通と呼ばれることをこよなく愛してんだから突っ込まないでよ。確かにこないだもスクアーロとバトってたけど。血だらけになりつつも先に音を上げたのは向こうだったけど。

「……僕はなんでもいいけど。今の状況が変わらないなら大丈夫だと思うよ」
「変わったらまた違うパターンを用意しております。時間ある時に作ってますよ」
「やることやってるんだ」
「当然っす。しとかねば、ね」

一応持って来てはいたから見てもらっていたら、草壁さんが失礼しますと入ってきた。相変わらずリーゼント。

「お久しぶりです沢田さん」
「お久しぶりですー。お元気そうでよかったですよ」
「それは貴方にもいえることです。お茶持って来たんでどうぞ」
「日本茶!やった!」

草壁さんの煎れてくれるお茶はなんでも美味しい。こぽこぽと注がれるそれはもうオレにとって好物の一つと言って間違いない。
一口飲めば、自分が煎れるお茶と比べ物にならないくらい美味い。

「まじ美味いっすわ」
「ありがとうございます。恭弥さんも」
「ああうん」
「書類はどうです?」
「いいと思う。僕が見る限り特に口を出すところは見つからない」
「なら良かった」

無駄足と言えばそうかもしれないけども、会って会話するのは漏洩の可能性のある所で話せないこともあるから丁度良い。今回もまたそれを聞きに来たわけでもあるし。
それより今のオレには草壁さんが取りに行ってきた物の方が心を揺さぶられるんだけど。

「和菓子です。久しぶりでしょう?」
「久しぶりっす!食べて良いんですか!」
「ええ、どうぞ」

よっしゃあ、とうきうきしながら食べるオレは緊張感のカケラもないと雲雀さんから叱られたけども、そんなもの久しぶりの和菓子に勝てはしない。帰る時お土産に買って帰ろうと心に決めた。



 

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