「俺は…沢田さんを信じたいっス」

たいってなに。希望的観測だよね。

「俺も、信じたい」

山本も。たいっていうのは願望だ。これは頭のどっかで少なからず疑いある言葉だよな。

「たい、ね。ねぇそれは完全完璧にオレがしてないって言いきれないってこと?」

言葉のあやかもしれないから最後の揺さぶり。ひどい奴だなオレって。

「それ、は…」
「俺達いなかったから状況見てねーから、な」

ほほうわかった。オレを信じたいけど周りの状況も目にちらつくし、一昨日は見てないし昨日は自分達は休んでたからわからない。そういうことだよね。うんわかった。
善人みたいなダメツナすら信じられないんだろ。だったら偽善者の自己中なんざ信じられないよね。じゃあそこまで、だ。

「そっか、そうだよね。二人は見てないもんね。仕方ないよね」

二人が黙るから沈黙が流れる。なにも言わないのはどういうつもりだ。
きっと声には諦めが含まれてただろう。けどしょうがない。事実だよ。この二人はほんの少しだけはオレを変えた。ほんの少し。だけどオレの根本を変えれない。

「多分そのうちなんとかなるでしょ。皆わかってくれるんじゃないかな!」

わかるわけない。男の涙は女々しいだけだけど、女の涙は武器になるもん。オレが泣いても無駄とあしらわられてはいおしまい、だ。

「…ツナ、俺達は」
「ぎゃ!昨日雲雀さんに呼び出されてたの忘れてた!」

もう何も届かない。弁解なんて予想のつく言葉聞いても意味がない。

「ごめんオレ行くね!」
「沢田さん…!」
「またね!」

そそくさと屋上を出て行った。ばたんと扉を閉じればさてどこ行こう。弁当も持ってるし。
結局オレって二人から聞きたい言葉があったのかな。信じるって言って欲しかった?ああ、うん。少しそうかも。でも言われなかった以上諦めるよ。弱い絆とやらだね。絆ってなんだよ、って話からオレは聞きたいけどな。
さて、そうだ。本当に応接室行こうかね。



 

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