彼女はその後教室に戻って来なかった。疑問に感じてたけど、思惑が上手い具合にいかずに悔しかっんだろうと思ってた。だって強欲そうだもん。結構自己中心的なオレが言うのもなんだけどさ。
獄寺君は昼休みが終わる頃帰って行ったし。
放課後になってようやく戻ってきた彼女は何故だかまた傷口が開いていた。開くとか馬鹿じゃない?痕残るよ女の子なのに。

「どうしたの!?」
「傷口開いてるじゃない!大丈夫?」

心配そうに近寄って声をかける友人達。大丈夫じゃなかったら保健室で寝てんじゃないの。全て開いてるわけじゃないから、指輪じゃなくて自分で開いたんだろうな。うわ痛そう。泣きそうな顔は苦痛から?けど目はオレに見せた目のままだよ?

「…くんに…殴ら…て…」

教室の前のドア付近にいるから聞き取りにくい。後ろ方の席のオレにはちょっと聞こえにくい残念。
仕方ないから帰ろうとすれば取り巻いてた女子に囲まれた。なんでだ。

「どういうこと?」
「あんな怪我をしてる赤崎さんを殴るなんて!」
「なに考えてんの?」

オレがどういうことか聞きたいわ。殴る?オレが?ありえない。一応フェミニストなんですけどね。

「そんなことしてないよ!」

するわけなかろうが。ダメツナができると思うのかお前ら。

「じゃあなんで今にも泣きそうな顔してんのよ!」
「来た時は傷口開いてなかったじゃない!」
「アンタに殴られたって言ってんのよ!?昼休み一緒に出て行ったじゃない!」

一緒には出て行った。誰が後先考えず殴るかよ。
山本なんでさっさと部活行っちゃうの。一対多数はダメツナには厳しいって。
ちらりと彼女を覗けば大丈夫かと声を掛けられながら、確かに泣きそうな表情はしていた。泣かないのは演技か。それても人前で泣きたくないとのプライドか。どっちでもいい。
理解したのはあの時の警報と寒気の意味。まったく超直感はすごいもんだね。

「出て行ったけど、でもオレ何もしてないよ!すぐ戻ってきたじゃんか!」
「私、私が悪いの…!」

激しい女子の罵声の中、元凶が声をあげた。そうだよお前が意味わかんねぇこと言うからだよ。

「私が告白して沢田君にフラれちゃっただけなの。きっと私がしつこかっただけなの…!」

嘘付いてないけど省きすぎ。しつこくなかったけど。あっさり引いたけど。

「しつこくされて殴るとか最低!」
「ダメツナが告白されただけでも有り難いと思わなかったの!?」

お前を利用させろ。そんな告白のどこが有り難い!嫌だろ。絶対嫌だろ。

「だからしてないよ!もうオレ帰る!」

欝陶しくなって鞄を引っ付かんで教室を出た。横目で元凶を見れば気持ち悪い笑みをオレに浮かべてるのを見て、明日から学校に行くのが一気に億劫になってしまった。
返せオレの平凡。



 

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