十年後
並中トリオ


















イタリア。日本程湿度はあるわけではないが、暑い日々が続いていた。少し歩いただけでだらだらと汗がでて、喉も渇くような日々だ。

「夏だよねー」

夜は日中に比べれば割と涼しかったりするのだが、夏は夏である。日本で育った綱吉には夏といえば、祭や花火といったものが定着しているといっても過言ではない。もちろんイタリアにもあったとしてもやはり違うのはお国柄が出るからだろう。

「夏、だがなあ…」
「十代目、これは…」

日も暮れた屋敷の外、中庭に集められた獄寺と山本。もちろん主である綱吉に呼ばれて、だ。

「日本語じゃないですか?」
「輸入した。ほんとはクローム達や了平さんも呼びたかったんだけどね、任務でいないし」

権力の無駄遣いだとおそらく彼の元家庭教師は歎くだろう。ちなみに名前の出てない雲雀は日本にいるから論外だ。

「手持ち花火だよな?」
「それ以外なにに見えんのさ」

どこから持ってきたのか水の張ったバケツもちゃんとある。まさに日本の夏の風景かのようだ。

「え、やんないの?」

やらないと言えば一人でもやるつもりだろう。蝋燭を垂らしてロウの溜まりを作るマフィアのドン。
だがそんなことをやらないなんて言う二人ではない。やりますと意気込む獄寺と、童心に返ったように目を輝かせる山本。そんな二人に満足そうに綱吉は頷いた。

「あ、消えた。獄寺君火ィ貸してー」
「どうぞ」
「何からすんだ?」
「とりあえず普通のやつ。線香花火は最後だかんね」
「お決まりですね」
「途中でやるには淋しいからなー」
「派手さはないからね」

会話をしていてもやると決まったからにはテキパキと進めていく。獄寺も山本も花火を丁寧にテープから剥がし、綱吉は火をつけた蝋燭を固定するため支えている。
十分後には綱吉も手伝って二袋の花火がばらされた。

「よし。持った?」
「持ちました!」
「火付けるぞ」

暗い中でも三人のウキウキとした表情が伺える。
ぼっと火がつけば三人のテンションはうなぎ上りだ。緑や赤や黄色の色とりどりの光にきゃあきゃあと子どものように大の大人三人がはしゃぐ。

「昔を思い出しますね!」
「夏によくしたよなー」
「高校の時は煩いとかいわれたりしたよね」
「音がなー」
「だから河川敷行きましたしね」

さすがに走り回ったりはしないが、くるくると回してみたりだとかして遊びたくなるのは久しぶりだからということにしておこう。鼻をくすぐる火薬の匂いだとか、目に染みるような煙だとか、もろもろ全て綱吉達には懐かしくてたまらない。
半分くらい終えたくらいに綱吉は新に割と大きい袋を取出した。またそれにも中の紙に日本で大きく文字がかかれていた。

「次これしよう!」
「ちょ、十代目これは花火は花火ですけど!」
「打ち上げじゃねーか!」

うんと元気よく言えばまさかここまで持っているとは思わなかったと二人は目を丸くした。

「ネズミ花火もあります」
「嘘ぉ」
「まじです。爆竹は昼間にしようなと持ってる」
「お願いですから廊下とかではやめてくださいね」
「大丈夫だよ。外に投げるからさ」
「室内で火をつけては駄目です!」
「はいはい。セットできたから火をくださーい」

軽口を叩こうが自分が楽しむ時には綱吉は努力も労力を惜しまない。ある意味イイ成長をとげたのを一番近くで見ている二人はもう馴れたものだ。お願いしますよ。と獄寺は打ち上げに火をつける。
大きな音がして花火が上がる。花火大会のような迫力はなくとも手持ちよりは迫力が出る。綺麗な火の粉は三人の顔を明るく照らす。少し見上げる彼らの表情までもがより明るく見えるようだ。

「やっぱいいなあ」
「ここイタリアですけど、日本って感じしてきますね」
「またしようぜ。昔みたいにさ」
「うん。約束ね」

大きな音に本部内にいたボンゴレファミリーの面々は次々に駆け付けたのだが、中学からの同級生であるボスと守護者は楽しそうに笑っていた。



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