十年後
リボツナ
「こんなところにいたの」
声がして振り返れば見知った顔。俺の最高傑作だから当然だ。まだまだ危ういところはあるが。
「一人か?」
「抜けだしてきたからね、一人だよ」
こういうところだ。自分の立場をわかっているのだろうに、こうしてちょくちょく抜目を見つけては一人で出かける。周りの奴らはたまったもんじゃない。
「お前に似合わないとこにいたもんだね」
「うるせえ」
ツナは横に来ておなじように海を眺めた。呪いが解けた俺は身長は少しツナより高くなり、少しではあるが見下ろせるようになった。その見下ろした顔は仕事場にいるときより数段あどけなさが残った顔。元々童顔だが、普段の顔はより幼く見える。
「そんな顔してりゃ高校生でも十分通りそうだな」
「こないだ夜中歩いてたら職質されたから言わないでくれる?」
「されてんのかよ」
「童顔なめんな」
ふて腐れた顔をするツナは余計に幼く見えるがそれは黙っておこうか。
「つーかさ、リボーンなにしてんの」
こんなところで。と付け加えられた言葉にさあな。とだけ俺は返した。別に何かしたかったわけでもない。仕事を終えて近く海があったから来てみただけだ。
「ま、息抜きだな」
「必要だかんねえ」
「お前はなんで俺がここにいるってわかったんだ」
「勘」
「………流石だな」
「まあね」
落ちていた石ころを拾ってツナが投げた。ぽしゃんと落ちた音が波の音と一緒に響く。その音がやけに虚しく感じられた。
「でもやっぱさ、血の匂いのするスーツの男が一人で海なんて似合わないよ」
「血の匂いはしょーがねえだろ」
「そうだけど。だからさ」
俺に手を差し出してにっこりと笑うツナの顔がやけに眩しく感じられた。
「帰ろう?オレ達がいる場所へ」
夕日が当たってはいるが、きっとそろだけじゃないだろう。
ああ、と小さく頷いてその手を取った。こんこんと続く波の音を後にして、俺達はそこを離れた。
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大人リボーンと海って
あんまり似合わないような気が。