まだ赤崎華乃がドン・ボンゴレではなかった時の話。いつものように任務についての調べ物を終わらして、それについての作戦をベルとおしゃべりしながら立てていた時だった。
「なー、王子ヒマー」
「知るか」
「…最近ツナヨシ、ボスに似てきたくね?」
「いやいやいや。似てないって。有り得ない」
「ボスにちくったろ」
「好きにしろよ」
おしゃべり、というのには語弊があったな。邪魔しに来てんだあいつは。来客といってもヴァリアーの面々と何か話す時に使うソファに態度でかく寝そべってオレに話かけるんだから。オレはといえば仕事用デスクの前に座ってイロイロ睨めっこ。
ベルはマーモンがいない時は基本オレと一緒にいる。護衛じゃないけど、オレに万が一があった時のためも兼ねているらしいが知らない。
「入るわよ」
「へーい。いらっしゃい」
そう言って入ってきたのはオレが呼びつけたスクアーロとルッスーリア。今オレがやってる仕事を誰を出すかってのをスクアーロと、ルッスーリアには何かお菓子が食べたいとオレがお願いしたから作ってくれた。優しいオカマだね。
「はい、本日はお疲れ気味なツナちゃんにブルーベリーを使ったチーズケーキよ」
「おー!眼の疲れ半端ないからありがたい!」
渡されたのはなんとも美味そうなチーズケーキで。唾液の分泌が増える増える。とりあえず二人にはベルが寝そべる前に座っていただいた。丸々ワンホール持って来てくれたから、三人でお茶にしようかとオレはお湯を沸かす。
「ビタミンも入っているからお肌にもいいのよ」
「そうなんだ」
「マジ美味そう!」
「お湯沸いたら紅茶作るからちょっと待ってね」
なんてことないオレの日常。暗殺集団なんだけどねコイツら。しかも幹部。会話の中身がなんかおかしいよね。
「スクアーロ、これ見といてー」
「ああ。誰がいいと思ってるんだぁ?」
「レヴィかなあ。あ、お湯沸いた」
「レヴィかぁ」
そうかと作った資料に目を落とすスクアーロを横目に、ぱたぱたとオレは紅茶を作りに行く。早く食べたいんですよオレは。
ちゃちゃっと作って四人分をローテーブルに持って行く。待ってましたと言わんばかりにオレとベルはいただきますとルッスーリア作チーズケーキに手を伸ばした。
「うまっ!」
「やばい!うまっ!」
「ふふっ、そう言ってくれると作った甲斐があるわあ」
その後も美味い美味いと二人で絶賛していたらまた作ってくれると言ってもらえた。嬉しすぎる。
「そういえば、ツナちゃんは昔何かあったの?」
「ん?なにってなあに?」
「ほら、前言ったじゃない。何かの境地に立ったみたいねって」
「あー、言ってたなあ」
「それツナヨシの過去ってことだろ?」
「そうそう」
「過去、ねぇ。聞きたい?」
わりと人が体験しないようなことはしたと思うけど。幼少期は。
「ちょっと興味あるのよね」
「オレ聞きたい」
「スクアーロも聞くー?」
「話すなら聞くぜぇ?」
「ん、まあ減るもんじゃないし話そうか」
少々昔話をしようか。