リボツナ











「ねぇリボーン」

しんとした部屋に声が響く。まだあどけなさを残した少年の声だ。

「なんだ」

ベットに座ったままのリボーンと呼ばれた黒に身を包んだ赤ん坊は、その身じろぎ一つしない背中を見つめた。顔も見えない、声も平坦ではわかるものもわからないために続きを待って。

「例えば、の話でね。オレがもし初代の血を引いてなければ、オレ何してたかな」
「…一生あのまま、ダメツナ人生だろうな」

机を見ていた顔は上げこそしたが見向きもしない少年。依然として赤ん坊の方を見る気配はなかった。

「だったらリボーンもここにはいないってことになるよね」
「そうだぞ」

そもそも9代目に頼まれて、といったカタチで彼――リボーンはここにいる。特殊な血筋であるこの少年を、マフィアのボスにするために。
それ故にその特殊な血筋とやらがなければ少年はマフィアなんぞになることもなかった。

「獄寺君と会うこともなかった」
「あぁ」
「山本と親友になんてなってなかったかもしれない」
「確率なら低いだろうな」
「お兄さんからも部活の勧誘を受けることはないだろうし、雲雀さんと会話することも、骸やクロームと会うこともないだろうね」
「……ツナ?」

どうしたというのだろうか。淡々とそれでいて過去でも語るかのような口調で少年は言う。
こんな時、読心術を心得ているはずの少年の家庭教師も、この少年が何を意味して言うのかがわからなくなる。もしかしたら意味などないかもしれないが。


「たられば、の話だよ」
「たられば?」

上体だけだがやっと赤ん坊の方に振り返れば、少年はなんとも言えない笑みを浮かべていた。
恐ろしいものでも、冷たいものでも、温かいものでもない。そんな笑みだ。

「うん。たられば。過去をね、ああだったら、こうじゃなければ、とかいった例えばの話だよ」
「知ってるぞ。そういった話は意味もないだろ」
「ははっ!そうだけどね。ただね、」

少年は体ごと赤ん坊と向き合う。闇でも映すかのような黒い瞳を見据えて。


「血さえのぞけば、全ての元凶はお前だってことだよ。リボーン」


そこでようやく赤ん坊は理解した。少年が何が言いたいのかを。
親子二人だった沢田家に大量の居候ができたのも、自分より経験も年も上の人間と死闘を繰り広げたのも、全てはお前が来たからだ、少年はそう言いたかったのだろう。

「…恨んでいるのか」

恨まれても仕方はない。確かに自分が来てから14歳の彼、いや大人でも普通では有り得ないことが起きていたのだから。

「そりゃ多少恨みはあるけどね。けど感謝のが少し上回る、かな」
「感謝?」
「うん、感謝」
「スパルタで鍛えてちったぁ強くなれたことか?」
「違うよ!あれは恨みでしょ!体ぎしぎしだよ!」
「じゃあなんだ」

赤ん坊には感謝されることなどそれくらいしか思い浮かばない。たいして高くない彼の沸点はもうすぐそことなっていた。

「皆に会えたことかな」
「は?」
「いやだからね、リボーンが来たからさっき言ったことの逆になってるだろ。元凶はリボーンだけど、皆と会えたことの根源もリボーンってことでしょ」
「…あぁ」
「だから感謝してるんだよ」

そう言って少年はふわりと微笑んだ。それは先程とは異なったそれは、柔らかで温かい、それでいて包み込むような笑顔だった。
















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このあとリボーンはボルサリーノを
くいっと下げて照れ隠しなんか
してればいいな←


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