高校生
獄ツナ















「獄寺君は高校では何かするの?」
「何か、っスか?」

五月も中頃。そろそろ入学したての高校生活に慣れはじめた頃。
同じ高校に進学した綱吉と獄寺はとりわけやることもないが、休日はそれぞれの家に遊びに行くということが多くなっていた。付け足せば山本も同じ高校であり、山本の部活がない日は彼もそこに加わる。今日は彼は部活ゆえに二人が綱吉の部屋でまったりとしている。

「山本は部活じゃん」
「ああ、その何かですか。俺はバイトしようと思ってんスよ」
「バイトかぁ」

部活を始める者もいれば、バイトを始めて勤労学生として働く者もいる。バイトはいつでも出来るが、意気込みと共にやりだす学生が多いのは確かである。

「十代目はどうなさるんっスか?」
「うーん」

どうしようかと言いながら綱吉は机のお茶に手を伸ばす。リボーンの教えの甲斐あってか、綱吉の成績は底辺から抜けだし獄寺には及ばないが真ん中くらいにはいれるようになった。高校初の実力テストで本気で喜んだのは最近だ。

「部活されるんですか?」
「それはないね。オレ帰宅部だから」
「バイトですか?」
「それなんだよねー…」

こりこりとコップの氷を口に含んで転がしながら、ぼんやり天井を見上げる。不安げな顔をしながら獄寺はそれを見つめた。

「オレは多分イタリアに行くことになると思う。否応なしに」
「それは、その」
「あ、いいんだよ。皆を護る力を持てるのならそれでオレはいいと思えるから」
「十代目…」
「けどさあ」

天井から目線を下げて獄寺と目を合わす。それだけのことだが、なんでしょうかと獄寺はかしこまる。

「だったら遊びたくない?」
「遊ぶ…?」
「思い出作り的なさ。遊びたいじゃん」
「思い出作り!いいですね!俺は十代目とならどこへでも行きますよ!」

中学よりは落ち着いたといえど、獄寺の絶対は変わらない。綱吉が絶対であることは揺るぎない。綱吉はそれを知っているし、今更照れるものでもないのでありがとうと返した。

「遊ぶならお金いるよね」
「すいません、俺が不甲斐ないばっかりに十代目に出させてしまって…!」
「いや当たり前だからね。友達同士でおごってばっかとかオレ嫌だし」
「十代目は人間が出来ていらっしゃいますね」
「だってそうだよ。ま、その為にバイトかなー。獄寺君何のバイトすんの?」
「俺は迷ってるんスけど、三つくらい候補が」
「なになに?」

いつまでも母親に頼ってばっかではいられないのだろう。波瀾万丈な中学生活から綱吉は少しずつ自立も覚えた。自分で出来ることは自分でする、それが今出来る綱吉が結論出した自立の方法だった。
獄寺が候補と言って鞄から取り出したのは手帳であった。パラパラとページをめくり、あるページ、候補が書かれているのだろうページで手を止めた。

「えっと、一番有力なのは運び屋で」
「待った!健全な方法にしよう!」
「健全ですか?だったら近所の寂れた喫茶店でウェイターか引っ越しぐらいっスかね」

初っ端が健全でないとは綱吉とて思いもしなかった。運び屋がイマイチ何を運ぶのかはわかってはいないがランチアがあの鉄球を運ばせたのだから、確実に一般人が普通に生活していて手にするものではあるまい物を運ぶのだろうと予測はつく。

「獄寺君がウェイターかあ」
「似合いませんか。引っ越しのが良いですかね」
「や、すごく似合うと思うよ!」

心配事はあるけれどなんてことは黙っておく。似合うと思うと言われて目を輝かせる彼に綱吉は性格に難があるとは言えはしない。

「じゃ、じゃあさっそく俺ここに電話します!」
「だったらオレもしようかな」
「…へ?」
「オレも獄寺と一緒のところで働こうかなって思うんだけど、駄目かな?」
「ぜぜ全然いいっス!むしろ一緒に!」

十代目と一緒なら自分も心強いっスと嬉々として獄寺が付け足せば綱吉もまたオレもだよとにっこり笑う。

「後で電話番号教えてくれない?」
「もちろんっス」

獄寺の暴走の制止役が出来るのは並盛では綱吉とリボーンと奈々の三人くらいなものなのでちょうど良いのかもしれない。当の本人はそのことに気付いているのかは定かではないが。

「決まるといいねー」
「十代目が落ちるなんてありません!」
「いや、こればっかはわかんないよ」

そんなことを言いながらまだ決まってもいないバイト先で二人は会話が弾んでいた。












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久しぶりに普通の短編書いたら
なんか、不完全燃焼に
なってしまった…!

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