綱吉と雲雀















こんこんと休日の並中にノック音がした。休日とは言えど、誰もいないわけではないし、職員室ならばノック音がするのは当然だ。しかし、そこは応接室。並中生誰もが恐怖の対象として近寄ろうとはしない部屋だ。

「入っていいよ」

部屋の主から声がして、怖ず怖ずと一人の少年が中へと入る。わざわざやって来たのだから、もっと堂々と入れば良いが少年こと沢田綱吉にとってもここの主は恐怖の対象であることに違いないのだ。

「お邪魔します…」
「ワォ、帰宅部の君がわざわざ僕に何の用?」

中にはその対象一人で誰もおらず、それがほんの少し綱吉を安心させる。おっかないのが何人もいればそれこそ臆病者な彼は始終びくびくとしっぱなしだ。

「用ってか今日、雲雀さん誕生日ですよね。何歳かは知りませんけど」
「そうだよ」

恐怖の対象こと雲雀は「僕はいつでも好きな学年だよ」と言い、現在何年なのかもわかりはしないが、一応誕生日はこうして毎年やってはくる。当然大半がいくつかは知らないが。

「おめでとうございます」

どうぞと雲雀の前の机に置かれる紙袋は言葉からして誕生日プレゼントらしい。

「……まさか君からこんなものを貰うとはね、思いもしなかったよ」
「いつもお世話になってるんで」

にっこりと笑う綱吉から雲雀は視線を紙袋に向け、開けてみる。中にはこどもの日だからか柏餅と小さな袋があった。

「柏餅……」
「あ、それうちの手作りです。うちこどもいっぱいいるんで母さんが大量に作ったんですよ」

ああ、と雲雀は納得した顔をした。綱吉の家には小さい子が四人もいる。黒に身を包んだ赤ん坊を含めればの話だが。見た目は赤ん坊でも彼の中身は赤ん坊ではない。

「小さい袋は?」
「雲雀さん何がいいかなんてわからなかったんで、学生の必需品です」

学生の域を超えた並盛の秩序であっても学ランに身を包んでいるのなら学生だろうと、綱吉は考え選んだものだ。
がさりと取り出し開ければ、必需品と言った通り和柄のボールペン二本と同じく和柄のシャーペンが一本入っていた。

「確かに必需品」
「書類のサインでも使えるじゃないですか。だからこれかなって」
「そうだね。使わせてもらうよ」

貰ってくれた雲雀に安堵の表情を向ける。風紀委員以外で親しくする人物がいない為、贈ったところで貰い受けてくれるのかがわからなかったのだ。いらなければいらないと突き返すような人物なのだから。

「それじゃ失礼しますね。家が騒がしくなるんで」
「群れるのは感心しないけど、今日は目を瞑ってあげるよ」
「ありがとうございます」

部屋から出ようと綱吉はノブに手をかける。その瞬間、思い出したようにくるりと雲雀の方を見てふわりとした笑みを雲雀に向けた。

「HAPPY BIRTHDAY、雲雀さん」










----------

山本の誕生日には
なにもできなかったんで
雲雀さんはと意気込んだがなにやら
よくわからなくなってしまった。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -