綱吉中三
雲ツナ















時期は新学期。三年であった笹川は卒業し、雲雀も三年だったようで卒業していった。めでたく高校へと入学した頃か。
綱吉達も三年になり、あと一年で義務教育というものが終わろうとしている。

「オレは成長できたかな」

たくさんの経験を積んだ。普通に生きていたら経験できないような経験。経験は成長に繋がるが直結ではない。自分はまだ生かしきれてはいないと思う。

「やっぱり根本は変わらないしな…」

ふうとため息一つ。校庭の木に背中を預けて地面に座る。散っていく桜をただ綺麗と眺める。
そんな中に黒い物体が落ちて来た。

「うわぁぁああ!」

猫か、それともなんだと目の前の物体を見ていれば、なんとも綺麗に着地した人間だった。

「うるさい」

むくりと立ち上がるそれは綱吉のよく知る顔で。去年の今頃は桜を見るとふらふらになっていた人物である。

「ご、ごめんなさい!ってなんでいるんですか!高校行ったじゃないですか!」
「だからうるさいよ。いちゃいけないかい?」
「いや、そういう意味じゃないんですけど…」
「ふん、まだ仕事の引き継ぎが終わってないんだよ」
「あ、そうなんですか…」

並盛の風紀委員といえば雲雀さんを筆頭に、その町の秩序やらなんやら管理する軍団である。高校に入ってもそれは健在で早速恐怖政治を組み敷いたという。

「…君は変わらなくていいよ」
「へ?」

何のことだと首をかしげる綱吉。一歩、また一歩と近づく雲雀だが、いつものような威圧感や恐怖は感じられない。

「根本的なとこ」
「あ、あー。聞いてたんですね…」

降ってきた、ということは木の上にいたのだろう。聞かれていたことを今更ながら恥ずかしく思う。

「君は僕と違って他人の為に強くなる。だったらそのままの君でいい」
「でも、オレまだまだ弱いです……皆を守れない…」

戦って戦って、自分は一人では弱いと。一人で守ることはできないと綱吉は自覚していた。それがまた悔しかった。

「周りは君に守ってもらおうなんて考えちゃいないよ」

雲雀の言うことは事実である。逆に数人は綱吉を守ろうとしていたりもする。

「わかってるんでしょ。だけど守りたい。だから強くなりたい」
「でも…!」
「でも自分は弱い?確かに他人が関わらないと君は弱い。でも向上心があるだろう?」
「こうじょうしん?」
「そう。強くなりたいって思ってる」
「そりゃ…そうですけど…」
「じゃあそれでいいじゃない。向上心が有る限り、強くなれるよ」

自分の限界とは自分が決めるもの。諦めない限り大丈夫である。雲雀が言いたいことはこうであった。
最初こそ苛々する気弱な綱吉だったが、他人の為にと体を張る彼は雲雀ですらいつの間にか認めていた。どんな種類強さでも雲雀とっては一緒なのだ。

「なれ、ますかね」
「なろうとするならね。君は変われたんだから」

それでも綱吉は渋るから雲雀は頭にぽんと手を乗せた。驚いて顔をあげる綱吉の目に、冷たい残虐な笑みではなくて柔らかく笑う彼が映る。舞う花びらも手伝って端正な顔立ちはとても映えていた。

「まだまだ強くなりなよ綱吉。すべて君次第だ」

通常では見ることはできない表情に返事がワンテンポ遅れたが、そうですねと綱吉は返した。
友達ができて変われたなら、今から自身の努力で変わることはできるかもしれない。変わろうとしなければ変わらないのと同じく、強くなろうとしなければ強くなどなれやしないのだ。

「やれるだけやってみますよ」
















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綱吉にとっては
一人ひとり影響力が大きい
気がしますが雲雀は中でも
大きい気がします。

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