高校設定
山ツナ













「ねぇ山本」

屋上で飯を食った後。なんでもないような、それでいて覚悟したような顔で空を見上げて呟くように俺を呼んだ。

「オレね、卒業したらイタリア行くでしょ」
「おう」
「お兄さんは既に行っちゃったし、雲雀さんは並盛から離れる気はないと思うけど、それでもマフィアなんてのになったじゃん。クロームも来るって言ってたし、獄寺君は喜々としてる」

知ってるよ。全部ぜんぶ、決まった次の日にはツナから聞いた。笹川先輩の時が一番よくわかんない顔してたな。

「山本はさ、野球好きでしょ。引退しても行ってるしね」
「好きじゃねーとあんなけ必死になんないのな」

どんなに寒くても校庭の土を蹴ってた。どんなに暑くても白球を追いかけてた。ツナと親友になるまで俺の一番は野球だったんだ。

「だよね」
「どうした?ツナだって俺が野球してんの応援してくれてたじゃねーか」

練習試合だってほとんど毎回見に来てくれて。誰より何の声援より、俺にはやる気がでる声援をくれて。俺が打てば誰より喜んでくれたのはツナなんだ。

「うん。だからね、オレは山本の野球見るの好きだし続ける意志があるなら続けて欲しいんだ」
「…将来ってことか」
「そう将来。山本は無理にオレについてイタリアに来なくても、マフィアなんかにならなくてもいいと思ってる」

リボーンは悔しがるだろうけど知らない。そう付け加えたツナの顔は横顔しか見えないけど、先輩のことを話した時と似ている気がした。ついて来て欲しいけど来ないで欲しい、多分そんな顔。
来るなって言えば行けないのに、ギリギリになっても選択肢を与えるお前は優しいのかな。

「それな、決まってんの」
「え?」

ようやくこっち見たな。黙ってたけどな、オレはお前が卒業したらイタリア行くって言った時から決まってんだよ。

「お前と一緒に行くに決まってんのな」

いつもの俺らしい笑顔で言ってやれば渋い顔になる。こんなときはたいがい余計なこと考え過ぎだ。

「野球は?」
「高校でストップ。ま、やりたきゃ向こう行ってもやればいい。好きな奴集めてな」「でも夢が…」
「昔の夢と今の夢一緒にすんなよ?今は違う。今は親友と一緒にいれたら俺はいい」
「………」
「お前のせいじゃない。巻き込まれても断らなかったのは俺。拒否なんて俺はしたことねーよ」

だからそんな悲しそうな顔やめてくれよ。スランプだった俺を救ったのはお前で、そっからツナは俺のヒーローなんだ。ヒーローは笑ってんのが似合うんだ。

「…わかった。ごめんね」
「謝んな。決めたのは俺だし」
「じゃあ、ありがとう」
「おう!」

やっと笑った。そうだよ。お前はそれが一番良いんだ。
ありがとうなんて俺の台詞。ツナがいなかったら俺は野球続けてたかさえわからないんだよ。

「忙しくなりそー」
「ははっ!賑やかだしな」
「まったくだよ。落ち着きって売ってないかな」
「あったら俺も欲しいっての」
「だよね」

もうすぐ学生生活が終わる。だったら十分に満喫して終わりたい。コイツの隣で。












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山ツナって初めてです。
24山本は部下集めて野球してそう

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テーマ「人外ファンタジー」
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