獄ツナ










「ふーっ」

ぼんやりと窓の外を眺めながら、獄寺は息を吐き出す。吐き出した煙と曇り空はどこなく虚無感を引き立てた。
今日は日曜日で学校もない。雨が降ってもおかしくないような天気では、獄寺は出掛ける気分になれなかった。特に何をするでもなくタバコを吹かして半日が過ぎていた。
不意にチャイムが鳴った。どうせ面倒なセールスだろうと獄寺は出なかった。しかし相手は諦めない。

「んっだようっせぇな」

そんな相手に渋々獄寺は立ち上がった。タバコをくわえてがちゃりとドア開ける。

「るっせぇんだよめちゃくちゃな押さなくても聞こ…」

ぽとりとタバコが落ちた。皺を寄せた眉は上がり、目を丸くさせる。口はだらし無く開いていた。

「ひっ!ご、ごめん!いきなり来て…邪魔したよね…」
「じゅっ!10代目!!」

あわあわと獄寺は落ち着きなく動く。しょんぼりとする綱吉は帰ったほうがいいよね、などと言っている。

「と!とりあえず入ってください!」
「え、でも…邪魔じゃ…」
「そんなことないっスから!10代目が邪魔だなんてありえないっスから!えっ、と。あの、散らかってますけどどうぞ!」

じゃあと言う綱吉を獄寺は招き入れた。ちなみに獄寺の部屋は散らかるどこか、わりと殺風景で整っている。

「奥で適当に座っててください。今なんか飲み物持って行きますんで」
「う、うん」

言われた通り、部屋のソファにちょこんと座る。
そのまま座っていると5分もしないうちに、ジュースを持った獄寺がやってきた。ジュースをテーブルに置きながら、獄寺は綱吉の顔が固いことに気付いた。

「あの、10代目、どこか具合でも悪いんですか?」
「へ、え?そんなことないよ?」
「ならいいんスけど…」
「獄寺君の家入るの初めてだから、緊張してるからかな」

そう。実は綱吉は初めて獄寺の家に入る。だいたいは獄寺が沢田家にやって来るので来ることがなかった。それもあって先程から顔が固く強張っていたのである。

「そんな!気を使わないでください!自宅と思ってくださって大丈夫っスよ」
「いや思えないけどね。ありがとう」

会話により少し落ち着いたのか綱吉の顔は少し柔らかくなった。やはり強張った顔よりも、笑っている綱吉の方がいいと獄寺は思う。

「そういえば10代目、なぜ家に?」

用もなく来ないだろう。天気が良いなら「暇だったから遊びに来た」と言うのはわかるが、あいにく今日は雨すら降りそうな曇り空。おとなしく家にいた方が賢明だと言える。
そもそも普段学校へ行くのには獄寺が綱吉を迎えに行くし、休日でも月三回前後は沢田家へ遊びに行く。それゆえ綱吉が来たことがない、というより来る必要性はほぼないのだ。

「あぁうん。それなんだけどね、こないだ獄寺君がうちに来た時、忘れて帰ったでしょ」
「へ?」
「…やっぱり忘れてる。はいこれ」

そう言ってポケットから出されたのは獄寺がいつも付けている指輪のうちの一つだった。

「…こんなものの為に……」
「あー…やっぱ迷惑だったよね…」
「ち、違いますっ!感激っス!10代目がわざわざこんな、俺の持ち物ごときで足を運んでくださったこのがもうっ!」
「…大袈裟だなぁ」

一瞬顔が引き攣ったがこんな風に言われれば苦笑する、否、苦笑するしかできない綱吉。やっぱり10代目はお優しいお方っス!なんてごちゃごちゃ言いながら獄寺は感動している。獄寺のこれは一週間に少なくともニ、三回程あるので綱吉筆頭に周りの人間は慣れたものだ。

「よし。ちゃんと返したしオレ帰るよ」
「もう帰るんスか?まだゆっくりしてってくださって大丈夫っスよ」
「いやー、雨降りそ…降ってるし…」

外を見れば、先程は黒い曇り空で雨は降っていなかったのだが、今はもう小雨とは言えないくらいに雨が降っていた。

「結構降ってますね」
「オレ傘持ってきてないんだよねー…」

乾いた笑いでどうしようとぼんやり綱吉は思う。獄寺宅にある傘は一本だったので、借りるのは忍びない。うんうん唸っていれば獄寺から声がかかった。

「…止むまで、いますか?」
「え、いいの?」
「もちろんっス!むしろいて下さい!」
「そう言ってくれるなら…ありがたくそうさせてもらうね」

はい!と元気よく頷けば綱吉はにっこりと微笑んでくれる。
実のところ獄寺は出掛ける予定もなかったので、傘を貸しても良かったのだが、なんとなく綱吉にいて欲しかった。何故だと聞かれてもわからないけれど。あえて理由をつけるなら「もっとこの人の笑顔を見ていたいから」という理由だろうか。
その後、数時間雑談などをしているうちに、獄寺にあった虚無感は消えていた。














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この後ツナは泊まればいい!
んでから獄寺はドッキドキで
寝れなかったらいいな!

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