BADEND
救われない。綱吉嫌われ。

















ひんやりとした空気が漂う誰もいない夜の学校の屋上、綱吉は思う。疲れた、と。
仲間だった友人達に真実を訴えかけても暴行は繰り返される。それどころか、訴えかける度に嘘つきと言われて状況は酷くなる一方だった。

「もう、疲れた…」

口に出してみても何も変わらない。疲労感が増すだけだった。
昔から細い身体は更に細くなった。擦り傷など自分のドジでついた傷だけでなく、今ではじゅくじゅくとした火傷、青や赤黒く腫れ上がった打撲の痕、故意的に付けられた切り傷やミミズ腫れが身体のいたる所につけられていた。

「なんで…こんな…」

悔しさで涙が溢れてくる。
きっかけは一人の転校生の少女だった。自分もマフィアなんだと言うその少女に、かつての仲間は親近感を覚えて徐々にに親しくなっていった。綱吉を除いて。
綱吉はどうしても好きになれなかった。可愛こぶった口調だとか、野心を隠さないその瞳だとか。しかし何故だか根本的な部分は綱吉にもわからなかった。今となっては忌ま忌ましい血筋がもたらす超直感とやらのおかげとわかるが。
そうして綱吉は少女に嵌められた。最初こそ信じていなかった仲間達も次第に彼女を信じた。綱吉に殴られたと倒れて泣いた少女を見て。

「…母さん達までなんて」

母親に伝わりはしたが、母親だけは自分を信じてくれると思っていた。しかし希望は打ち砕かれた。
それから自分の食事はなくなった。綱吉の洗濯もしなくなり、自分でやるしかなかった。居候達も冷たくなり、物事の判断が付かない子どもでさえ周りを見て綱吉に冷たくあたった。
家で言えば彼の家庭教師は特にひどかった。事あるごとに綱吉に愛用の銃を向けて打った。そんな男に育てた覚えもなければ、そんな男だったと思わなかったと。

「オレもう嫌だよ…」

元々優しい性格である綱吉は、殴られる事も殴る事も好きではなかった。自分が痛いなら相手も痛い、そう思えるまさしく純粋な少年であった。
そんな彼だからこそ、今では自分を憎悪と嫌悪の眼差しで睨み、自分を笑って傷つける元友人であっても、恨んだり邪険にするなどしたくなかった。
しかし優しい綱吉だって人間である。自分がしてもいないことを悪いと思えないし、暴行を受ければ相手に関して負の感情は生まれる。
そんな自分に綱吉は嫌気がさしていた。

「ねぇ。オレが消えれば解決するんでしょ」

毎日「死ね」や「消えろ」など罵倒を浴びている。だったら、と色々と麻痺してしまった綱吉は思い立ち、自身の通う屋上にやって来た。最強最凶の風紀委員長が帰ったのは確かめてからだ。
傷だらけの痛む身体を酷使してフェンスを跨ぐ。

「大空だった人間は空に還る、か」

小さく笑って目を閉じた。ゆっくりと息を吐き出し、支えが何もない前へと身体を倒した。

痛みからの解放。
すべてからの解放。

大きな音がして地面に落ちた彼の身体は血を流し、この世の全てと別れを告げた。
















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バッドエンドー!!!
やらかした感が募るのは
きっとやらかしたからですね。

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